流転カラオケ居酒屋

第11話 たまり場ダイナミクス

 僕は啓蒙しないし、啓蒙されない

 共感はするけれど、同情はしない

 慣れ合いはするしないではなく、その距離に近づかないことが肝要


 そしてたまり場とは、仲間が集まるのではない

 そこで仲間になり、その場を離れれば他人に戻れる関係であるべきだ

 しかし、重ねて言うが、これは啓蒙ではない


 だいたいが、酒が絡むわけで、酔っ払いのすることである

 そこには

 筋を通しても、一筋縄でいかなかったり

 無理が通れば道理引っ込んだり

 顔を立てるとか

 頭があがらないとか

 尻に敷かれるとか

 顎で使われるとか

 二の足を踏むとか

 肘鉄を食らわすとか

 泣いて馬肉を切るとか、サンコンの霊とか・・・いや、これは関係ないか


 今日通じたルールが明日は通じないというカオスな世界である

 啓蒙したところでどこの場所でも通用するというわけではないのだから、昨日お尻を触っても笑っていた女子が、今日は平手を食らわすということが、当たり前の世界なのである


 故に”高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に”対応することとなるとわかっているのだから啓蒙するだけ無駄と言うことになる


 つまりは行き当たりばったりなのが”たまり場”なのだから


 しかし、行き当たりばったりと言うのは話して悪いイメージに囚われがちであるが、サッカーを覚えたての人の行き当たりばったりプレイと、プロ選手の行き当たりばったりプレイでは、まるで次元が違うように、そのたまり場にすごい奴がそろうと、知り合い同士が集まるよりも破壊力抜群の集団が出来上がることがある


 僕はこれを”たまり場ダイナミクス”と呼ぶことに……今、決めてみました


 たとえばカラオケバーなどで、それぞれのテーブルの客は顔は知っているがあまり話したことがないという関係だったとする

 それそぞれが順番に思い思いの曲を歌っているうちに誰かが歌った曲をきっかけにとんでもない盛り上がりを見せることがある


 大概は”空気を読まない系”がその流れを断ち切るのだが、”たまり場ダイナミクス”が機能している状態では、それすらも”変化球”としてグルーブの中に組み込まれてしまうことがある


 たとえば”場の空気を読む系”ばかりが集まっても”たまり場ダイナミクス”は発動しない。ある程度の協調性と競争意識、自意識過剰と太鼓持ち、オレ流と姉御肌、女王様とお呼び系と下ネタ大王、ニヒルにナルシスト、腹芸に八方美人、多様性と多次元、多面体にポアンカレ予想、カオス理論に量子力学


 総じて言うなれば”スタンドアローンコンプレックスとシンクロニシティによるダイナミクス”であろうか


 意味のある強い言葉を重ねるとそれぞれが打ち消し合い、意味を消失していくが、偶発的に起きる、それら個々が放つ波動の共振により、強い意志を持つ一個の集合体として機能し始めるが、誰もそれをコントロールできないでいる状態


 昨夜、その”スタンドアローンコンプレックスとシンクロニシティによるダイナミクス”を久しぶりに体験した……何が起きたのか


 ではまた次回

 虚実交えて問わず語り

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