第13話 愛すべき酔っ払いの宴と秘め事
フラストレーションとはいかにして溜まっていくのか
ストレスとは生活における抑圧や苦悩、葛藤で、フラストレーションとはストレスが解消されずに溜まっていくことを示す
お酒を飲みに来る人というのは、それもカラオケのある店に来るというのは、飲んで歌って日ごろのストレスを解消しようという人たちである
自分だけが酔って歌えればいいのであればカラオケボックスに行ったほうが存分にストレスは解消できるし、誰かに邪魔されることもないだろう
しかしカラオケ居酒屋という場所は飲んで歌うだけでは満足できない人たち――飲みたい、食べたい、話したい、歌い、聴きたい、聴いてほしいとう実に欲深い人たちの集まる場所である
そしてそういう人というのは大概、ひとクセも、ふたクセもある兵(つわもの)、曲者(くせもの)、変わり者(ヘンタイ)の気が少なからず、そして多からず、悪しからずあるのである
そのような人たちにとってフラストレーションが溜まる状況とはストレスが解消できる状況にありながら、そのお預けを食らい、さらに問題の解決方法がわかっているにもかかわらず、お互いが曲者だけに”火中の栗”を拾うのはゴメンだと、早く誰か何とかしろと思っているような……つまり共通の敵がいる集団が協力できないでいる今、このとき、この場所なのです、はい
”嫌がられる酔っ払い”に成り下がった”上機嫌なお兄さん”はマスターにしかられながらも最後の一言”出て行け!”を言われるギリギリすれすれを千鳥足で歩きながら悪い方向へ饒舌、上機嫌になって行きます
ああ、もう見ていられない
これでもし僕がこの店の常連であれば間違いなく何とかしてたでしょうね
やたらとママにからんで本気に”やめて!”を引き出してしまっている状況ですが、”上機嫌なお兄さん”に店の人や常連さんが厳しい態度を取らないのは彼が”憎まれっ子”であるからなのです
きっと彼はとても”楽しい上機嫌”な時もあるのでしょう
彼のパフォーマンスなのか彼の性根なのかはわかりませんが、皆彼のことを鬱陶しいとは思っていても嫌いではないというのが、なんとなくわかってしまっている以上、そういうところに出しゃばるのは、”こういう場”ではご法度なのです
こういう場とはつまりたまり場です
ことの決着はいたってシンプルです
酔っ払いのパフォーマンスは無限には続かない
何事にも行動の限界点という物があります
つまり”酔いつぶれるまで待つ”
ところがこの日の彼が青天井――ついにマスターの”いい加減帰りなさい、さもなければ出て行きなさい”が発動
彼は家路に着くことと相成りました
面白いのはここから
彼がいなくなった後のお客さんたちのはしゃぎようは本当に大人気ないくらいに大人でした
誰かが歌うたびに手拍子、掛け声、大笑い、その場で踊りだす始末
みんな最初からこれがやりたかったのにずっとお預けされた分、短い時間で昇天です
さて、人は大きなフラストレーションから解放されたとき、いろんなものが開いちゃいます
心が開いたり、財布の口が開いたり、秘密の封印が開いたり……恋の花が開いたり
”つり橋効果”というものがあるそうですが、あれはそういうものだったのでしょうか?
さて、いよいよ次回、このエピソードの本題となります
ではまた次回
虚実交えて問わず語り
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