第107話 お母さんは何故、赤ずきんを森に行かせたのか

 戒めという観点彼見ると”赤ずきん”の物語は、母親の言いつけを守らなかった少女の災難ということになるでしょうか


 赤ずきんの設定は少女です

 果たして18歳なのか、15歳なのか10歳なのか、もっと小さいのか


 わかることは、稚拙だということ

 もっといってしまえば人を疑うことを知らない、警戒心のない少女ということになります


 母親の言いつけは寄り道をせずに、森に住むおばあさんのところにパンとミルクだったか、あるいはワインだったか――それをかごに入れて一人で森の中をあるけるくらいなのだから、やはり5歳よりも上だろうし、10歳前後にはなっていたのだろうと推察されます


 寄り道は消してしないようにと言いつけられるあたりからも15歳ということはないでしょう


 僕はもうこの時点でいろいろと気になってしまいます


 はたしておばあさんはどうしてそんな森の奥に住んでいるのでしょうか?

 もし一緒に住んでいれば、赤ずきんを狼がいるような危険な森の中にお使いにやることもなかったでしょう


 赤ずきんはおばあさんの家に行くことを嫌がることもなく引き受けます


 もし疎遠ならば、見知らぬ人のところに一人で行くのはとても不安です

 パンやワインというのは、生活必需品です

 ミルク――すなわち牛乳が食料品として飲まれるようになったのは日本もヨーロッパもそれほど昔のことではないようです

 調べてみると牛乳が食卓に上がったのは日本は明治から、ヨーロッパでも150年くらいまえからだそうです

 チーズやバターを作るのに乳は絞っても、それを飲んだりはせず、もっと言えば乳製品は身体に有害であると信じられていた時期もあったくらいです


 なのでここはワインやいわゆる果実酒のようなものであったはずなのです


 ふむ、赤ずきんのような少女が森を一人でワインとパンを抱えて歩いている姿は、”鴨がネギをしょって歩いる”のと同義とまでは言わないまでも、海老で鯛をを釣るのだとしたら、赤ずきんをえさに大物(悪党)の狼をおびき寄せるのには、絶好の”おとり”であったことでしょう


 僕にはどうも都合よく狼に襲われたり、それを猟師が助けたりというのは、話が出来すぎているというか、上手すぎると思うのですよね


 もしも猟師と赤ずきんのお母さんが良い仲だったら・・・


 陰謀の臭いがぷんぷん匂ってきますが、それは次回にまた検証するとして、まずはお母さんと娘、娘とおばあさん、おばあさんとお母さんという女三代の関係性について考察してみましょう


 お母さんと娘の関係は純然たる親子であることは、特に疑問を抱くところではないですが、お母さんとおばあさんは血縁関係があるのかないのかについてはどうでしょうか?

 物語の中では特に語られていませんが、おばあさんは赤ずきんの父方の母であり、そのあたりが、森の中で一人で暮らしている理由――つまりおばあさんは夫、すなわち赤ずきんのおじいさんに先立たれ、やむなく森で一人でくらしているのではないでしょうか


 森はまた、聖職者たちの権力の及ばない場所であり、そういう場所に暮らしている年老いた女性には”悪い噂”が立つことあります


 そうです、赤ずきんのおばあさんは魔女だった・・・かもしれないのです


 では、また次回

 虚実交えて問わず語り


 

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