餃子をつつきながら見える景色
第4話 逢いたい人に会いに行く
逢いたい人に会いに行きなさい
そうすれば、きっと何かがかわるから
この言葉を聞いたのはdoradoradio (*1)というライブ配信番組を夜中に聞いたとき……もう7年か8年前のこと
僕はその言葉を真に受けて、知り合い以外のインディーズアーティスト(*2)のライブを見に行き、そこで世界がガラッと変わりました。
その後も多くの人と出会い、時に別れながらも、さながら新大陸を発見した冒険者のような気持でこの数年を過ごし、それがライフワークになるとともに、僕が書く物語は、そこで出会った人のいろいろからヒントを得て幅が広がり、深みがまし、語彙が増え、新しい使い方に気付き、今こうして、エッセイなるものを書こうと思うまでになったのです。
僕は僕が好きな音楽を同じように好きでいる人と出会いました
僕は僕が好きな映画を同じように好きである人と出会いました
僕は僕が好きな漫画を同じように好きである人と出会いました
僕は僕が好きな物語を同じように好きである人と出会いました
そして、今これを読んでいただいている人は、もう僕に出会ってしまっている
僕は僕の言葉に耳を傾けてくれる人に出会いました
僕は僕の詞(ことば)を読んでくれる人に出会いました
僕は僕の言魂に触れてくれる人に出会いました
僕はまだ見ぬ、あなたに会うために、言葉を紡ぎます
僕はまだ見ぬ、あなたに会うために、音を奏でます
僕はまだ見ぬ、あなたに会うために、想いを語ります
ひとりとの出会いを大切にすると、その出会いは必ず次の出会いに繋がります
お酒が好きで、カラオケで歌うのが好きで、でもそれでは満足できずにみんなでワイワイやりたいと思えば、いつのまにかそんな仲間が集まり、
バンドを組み
馬鹿騒ぎをし
時には真面目に語り合ったり
寄り添ったり
支えたり
頼ったり
SNSでどんな情報を発信しようが、
面白い写真をアップしようが
不満をぶちまけようが
誰かを罵ろうが
応援しようが
愛でようが
1万のいいねよりも、僕はあなたのいいねが欲しい
僕の言葉に耳を傾けて
共感してくれたり
アンチテーゼを示したり
ワクワクしたり
イライラしたり
笑ってくれたり
怒ってくれたり
そして僕が差し出した手を取ってくれる人に
これもまた5年も6年も前の話になるのだけれど、地元の駅前で路上ライブをやっている若いバンド(*3)を見かけた。
僕は出張帰りで、クタクタで、へとへとだったので、嗚呼、珍しいな、こんなところでとしか思わなかった。
でも彼らが奏でる音に僕は反応し、耳が傾き、彼らの詞(ことば)がすっと僕の中に入って来た。
”聴きたいのは君の声だ 神秘の森で見つけたまま”
”綺麗すぎて息を飲んで 終わらない森林浴”
まだ学生だろうか? 若いなと思いながら、その言葉のセンスに驚かされた。
僕は足を止め、しばらく彼らの演奏を聴いていた
演奏そのものは拙さが垣間見えるというか、路上慣れしていないのはすぐに分かったし、家路を急ぐ人にどう歌を届けていいのか、手さぐりでもがいているところなのか、彼らの持っているポテンシャルを持て余している感じがした。
いい曲だね
そんな言葉を掛けたのか、或いは
こんなところで珍しいね
と言ったのか、恐らくどちらかだと思うのだけれど僕は彼らと出会った
のちに彼らには僕が主催する音楽イベントに参加してもらったり、メンバーが抜けたり、変わったりといろいろとあったけれども、今は新メンバーでの再チャレンジといったところか
この前のライブには、いつにない覚悟みたいなものを感じた
逢いたい人に会いに行くとは、憧れの誰かに逢いに行くということと必ずしも同義ではない
まだ見ぬ逢いたい人が、この世の中のどこかに必ずいて、今はまだ見つけることができないでいるだけ、時が来れば、きっとその人と出会うことができる
だからこそ、逢いたいと思ってもらえたり、感じてもらったりできる自分であろうと僕は思う
そう思えたとき、人は穏やかに変われるのだと思う
なりたかった自分は、僕から見た自分だけではなく、まだ見ぬ誰かにとっての逢いたい僕、逢いたい自分になることこと
このエッセイを読んでくれた人にもいつかお会い出来ることを楽しみに
ではまた次回
虚実交えて問わず語り
注釈*1 doradoradio について
#doradoradioで検索してみてください
https://twitter.com/doradoradio
注釈*2 インディーズアーチスト
山作戰
http://www.yamasakusen.jp/
注釈*3 バンドと楽曲について
FeelAround
http://fee1around.wixsite.com/feelaround
紡
http://fee1around.wixsite.com/feelaround/blank-dvnwj
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