第90話 悪夢の攻略方法~ゾンビ編
前世とか前前世とか、輪廻とか転生とか、そういうことをあなたは信じますか?
まぁ、僕が子供の頃から好きだったオカルトで宗教的で哲学的で心理学的な事象なのですが、あるのか、ないのかでいえば、そういうことは、あってもいい派
不思議なことは、ないよりは、あったほうがいい
そんな僕の不思議体験は、残念ながらとても少ないし、いろいろ考えると、何一つ不思議ではなかったりする
僕はゾンビが嫌いでゾンビの夢が恐くて、それでも定期的にそんな夢にうなされる
ちょっとした催眠治療というか、どちらかというとスピリチャルなアプローチで、僕の前世について診てもらったことがある
これは言わば、遊びに近い部類で施術をする側も駆け出し、こちらも半信半疑みたいなことで、実際は僕の妄想力がブースとしただけで、前世を見たとは言い難いのかもしれないが――それでも効果はあったのです
僕は自分の血筋が能登半島あたりであることを最近知りました
それがその施術の時より前なのか、後なのかは記憶が定かではないのですが、どこという舞台はともかく時代はおそらく江戸時代
決して裕福ではない土地で、僕は年貢を徴収することを担当とする代官のしたで働く小役人と言ったところでしょうか
その年は不況で、農民からは年貢を下げてほしいという嘆願があり、僕はその調整役として心血を注いで、まぁ、なんとか妥協点を見出したんですけどね
せっかく交渉したのに鶴の一声でそれがご和算になり、僕はそれでは一揆がおきるかもしれないと訴えるのですが、ことは最悪の事態へと進みます
僕を信頼してくれていた村人たちはまるで人が変わったかのように役場を襲撃し、僕を追い詰めます
食べ物に飢え、集団で襲い掛かってくるそれは、僕が現代でゾンビ映画に見た人間が人間性を失ってしまった姿にどこかダブるのです
理性で解りあった人たちが、まるで別人のように振舞い襲い掛かってくる
僕は手に武器を取り、それを・・・
よくできた話ですが、どうでしょう
やはり僕の妄想力が生み出したストーリーという気がします
能登半島のあたり、加賀と呼ばれた土地では一向一揆が盛んであり、歴史の記憶と結びついて、そんな物語を紡いだのかもしれません
しかし、不思議なことにそれ以降、ゾンビに襲われる夢に変化が起きます
僕は追い詰められながらも、反撃を試み、活路を見出して生命の危機から脱することが出来るようになります
今ままで見てきた夢は、必ず鍵がちゃんとかからないような狭い場所に追い込まれ、扉を抑えきれず、ゾンビの侵入を許してもうだめだと言うところで目が覚めるというパターンのいくつかのヴァリエーションでしかすぎませんでした
そしていつの間にか、ゾンビの夢にうなされることはなくなったのです
どういうことがきっかけで人は恐怖を覚え、或いはその恐怖に打ち勝つのか
僕が思うに、遺伝子の中に組み込まれた前の世代、さらにその前の世代の恐怖体験が恐怖の引き金によって発現するということは、あるのではないかと思うのです
そしてまた、それに打ち勝つ方法も、僕の遺伝子の中に組み込まれているのかもしえないし、そうでないのなら、それを克服するために、僕は今、生かされているのかもしれないと、そんなふうに考えるのです
不思議なことはあってもいい、たとえそこには理屈があったとしても、不思議と思える潔さを、僕は尊ぶ
では、また次回
虚実交えて問わず語り
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