第62話 気になる木ブルース
”複雑怪奇なことをわざわざしなくてもいいのに”
僕もそう、想わなくもないんですけどね
僕が街をあるいているととても素敵な女の子が向こうから歩いてきます
言うなればそれは春の訪れ
素敵な笑顔を振りまき、おおらかに、軽やかに、清々しく、明るく、楽しくです
”いいなぁ、可愛いなぁ”
と思うまでは僕も普通なのです
ふとその横を観ると、何やら訳ありげで、影があり、戸惑いがちで、それでも下は向かずに、遠くを見つめながら歩いている子を見つけます
”なんだろう、気になる、気になる木”
向こうもこっちに気が付きます
あら、あの人こっちを見ている、どうしよう、でも、悪い人じゃなさそう
ふと、そこで呼吸が合うんです
定型の会話から始まって、お互いのスタンスがなんとなくわかると”実はわたし・・・”みたいな話になり、”それなら僕も・・・”と会話を広げて、ああ、なんか大丈夫そうとか、多少のことでは動じないなとか、そういう品定めをして
”プログレ好きだよね?”
みたいなところに落ち着くのです
類は友を呼ぶかどうかは知りませんが、幸福は一人でやってくるが、不幸は友達を連れてやってくる・・・いや、そうじゃない
歪だったり、歪んでいたり、変わっていたり、尖っていたり、凹んでいたり
スマートじゃないところに興味を惹かれて、それがなんでだって話になって”ああ、やっぱりそうだよね”ということなんですけど、同時に”またやっちまった”とも想うんですよね
だからやっぱり、振り返って春を追いかけたりもするんですが、もうそういうのは後手に回って、大概は手が届かないのです
でも、それでちゃんとバランスが取れている
僕の場合、追求ではなく探究なんですよね
探して、求めて、追いはしない
シンプルなものと複雑怪奇なものの、どちらにも魅力は感じるのだけれど、気が注がれるのは複雑怪奇な方で、シンプルさは憧れになる
僕にはミューズとウィッチのパラメータとプログレのパラメーターがあり、その中心にはブルースがある
ブルースを僕はままならない事象への諦めと受容と抵抗だと定義しています
”休みをとって彼女と遊びに行きたいが車も金もない
俺にはどうにもならない
だから今日も小銭を稼ぎに街に出る
ボスがどんなに派手な車で街中を走ろうが
俺には関係ないことだ
朝から晩まで働いて
今日よりましな明日を手に入れる”
僕の中のブルースは、こんな感じです
”ベイビーだから今夜くらいは
子守唄を唄ってくれ
ベイビーだから今夜くらいは
朝まで一緒にいてくれ”
この前段なしに、いきなり ”stay with me”とは言えないのです
では、また次回
虚実交えて問わず語り
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます