第63話 "I Love You"より愛している

 ”いつまでもそばにいてほしい”とか”ずっと、一緒にいておくれ”

 ”今夜は帰さない”とか”もう君を離さない”とか


 そういう言葉を連ねなくても、肝心なところで一言でも言えるようであれば、それはもうプログレである必要もなく、ラブソングをラブソングとして唄えばいいのです


 なんでそれができないかなんてことは、たとえ原因が分かったとしても何の解決にもなりません


 ”ありのままを受け入れてこそ、あなたはここに存在し得る”

 などという下りから


 ”存在を自ら証明することはできない

 あなたという客観があってこそ、僕は僕でいられるのだから

 目をそらさずに、見つめて欲しい

 僕と言う存在が消えないように”


 ここまで言葉を尽くして、あとは相手に投げっぱなしです

 これではラブソングというよりは、好きだと言って断られ、自分が傷つくことをどうにか守ろうと、言葉のブロックで壁を作り、その隙間から”僕を見て”と言っているだけにすぎません


 大概は無視されるし、そうなることを望んているとしか思えません


 ”悠久の時の中で、僕はあなたを思い続け、そして永遠を得る”


 叶わない恋こそ、純粋であり、永遠であると汚れを知らない乙女のように振舞うのです


 純度を求めるというのは、そもそも人間の目的とは真逆です

 なぜなら人は交配をし、交じりあい、多様化していくことで繁栄を得たのですから、現実を見ればそれは明らかです

 でもだからこそ、思想や表現の場では、純粋さを求めつつ、現実と理想との間で、自分の置き場所を見つけて行くのでしょうね


 つまるところ恋の純真さなど、恋が成就することの妨げにしかならないのかもしれません


 だからせめて創作物の中では、夢の中では、物語の中では


 ”I Love You , I Need You , I Want You”


 と囁くのが、普通と言うものです


 果たして僕には、創作の中でも、現実の中でも

 ”I Love You , I Need You , I Want You”と囁くことができるのでしょうか


 いや、できない


 なぜなら僕は"I Love You"よりプログレを愛しているから

 なーんちって


 では、また次回

 虚実交えて問わず語り

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