第55話 ミューズかウィッチか
無意識を完全にコントロールすることなどできるはずがない
仏教に非想非非想天というのがあって、難しいことは置いておいて、人が完全に感情や欲をコントロールできない、”想うことをしない、想うことをしないということをしない”という境地には、そうは簡単に達することができないのと同じに無意識というもう一つの自分、自分の影を好きに操ることなどできやしない
しかし実は、やろうと思ってできないことを人の心はオートマティックにやってのけているのです
意識するからこそうまくいかないと言い換えた方がいいでしょうか
これもまた量子力学(*1)みたいな話ですが”意識する=観測する”と結果が変わってしまうのです
放置して、想いのままに……ではなく思わないまま、無意識に委ねることができれば、それは”図らずしもコントロールされた状態”だと、僕は考えています
難しいですね
難しく言ってますからね
僕はベンジャミン改めミューズとドロンジョ様が、図らずも同じタイミングで僕の前に現れ、そして僕に通じるチャンネルを持っているという偶然は、僕自身の無意識がコントロールしている必然という言い訳を小難しく言っているのです
ふむ、ミューズとドロンジョ様というのも何かバランスが悪いので、ドロンジョをウィッチ(魔女)としましょうか――マージョではありませんよ
ミューズは僕の大事な人であり、ウィッチは僕の憧れの人である
僕はミューズをX軸、ウィッチをY軸にした精神的ポジションを取っている
y=ax²+bx+c
なんと美しい式でしょう
これをグラフにすると――もうオッパイにしか見えません
ウィッチは夜な夜なサバト(*2)を開き、僕を魅了します
僕はミューズとウィッチの間を行き来する胡蝶なのかもしれません
蝶になって空を飛んでいる夢見ている僕は、もしかしたら、蝶が人間になった夢を見ている僕なのかもしれない
誰かを好きになる――つまり恋をする感覚に目覚めた僕は、僕が特定の誰かに惚れ込み、うつつを抜かし、暴走し、揚句大事なものを傷つけたり、失ったりした過去を踏まえて、それを繰り返さないように無意識が、ミューズとウィッチの間で恋心のバランスを取ろうとしているのだとしたら
つまり僕がその無意識に気付き観測をし始めた瞬間から、自動制御されていた僕のバランスは崩れ始める可能性を秘めている
それが嫌ならまた、気づかないふりをすればいい
しかし、人はそれほど便利にはできていないのです
このままじりじりと焦げ付くような思いに耐えるか、両方を失うか、選択の時が迫っているのかもしれません
まさに、天使か悪魔か(*3)
では、また次回
虚実交えて問わず語り
注釈(*1)量子力学
二重スリット実験(電子を縦に二本の隙間(スリット)を開けた板を通して、その先の壁に打ち付けたときの壁に粒子がぶつかった痕跡を比較する実験)によって、電子は電子は粒であり確率の波であるが、観測によってその性格を変化させる
https://phys-and-program.com/entry/doubleslitexperiment
注釈(*2)サバト
ヨーロッパで信じられていた魔女あるいは悪魔崇拝の集会
魔女はサバトの夜にほうきに乗って空を飛び集会に集まると考えられていた
注釈(*3)天使か悪魔か
めけめけ執筆の小説
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885461358
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