第98話 ジーコ、オシム、フィジカル、中村俊輔

 サッカーの醍醐味はまさに歓喜の瞬間でそれはゴールと言う形で表現されることが多い

 しかし、その裏側には失点という悲劇が同時に起きている


 つまり”やるか、やられるか”がサッカーであると言うこともできる

 そして試合終了のホイッスルが鳴った時、勝利をかみしめ、次のステップを踏み出す者と、敗北を受け入れ、立ち直るべく何をすべきかを考える者が同じフィールドに居るのがサッカーでもある


 2006年のW杯ドイツ大会

 それまでの規律を重んじたシスティマチックなサッカーから自由を武器にしたファンタスティックでスペクタクルなサッカーを目指すべく日本はジーコという名選手を旗印に挑み、そして敗れた


 王者ブラジルに完膚なきまでに叩きのめされ、ピッチに倒れ込む選手たち

 その中にあって、そういう姿をこれまで一度も見せたことのない選手の姿があった


 中田英寿はいつもクールで、試合に勝とうが負けようがワールドカップ進出を決めようが、中田英寿であったのだが、そこには誰も見たことのない中田英寿の姿があった


 彼は、ピッチを去り、中村俊輔は今一度立ち直るべく何をすべきかを丸いボールに問いかけなければならなかった


 2002年には最後の最後で選考から外れ、その悔しさをバネに挑んだこの大会の直前には親善試合でドイツ相手に互角に近い仕上がりを見せていた

 しかしいざ、大会が始まると発熱に犯され万全のコンディションで望むことができなかった


 大会終了後の記者会見でジーコから『日本人はフィジカルが足りない』と言われたときの失望感は今でも覚えているが、その本質を理解するのにはさらに時間を要した


 たしかに足りていなかった


 それはやればできることであり、海外のサッカー選手であれば当たり前のことが日本人選手には足りていなかった


 それを踏まえてのオシム体制が始まり、”水を運ぶ人”というようなユニークな表現でピッチ上でのハードワークの必要性とそれに伴うフィジカルの重要性を解いたのであったが・・・


 志半ばでピッチを去ったオシムに変わり再びオカちゃんこと岡田武史監督は、フランス大会ではできなかった”監督としてやりたいこと”を軸にして強化を始めたのだが・・・


 結果は付いてこない

 国内の評価は散々だった2010年の南アフリカ大会

 ピッチの真ん中には3度目の正直、恐らく最後のワールドカップになる中村俊輔の姿はなく、新たな戦術を実践するために選ばれた本田圭佑が立っていたのでした


 そして日本は初めて自国開催以外のワールドカップで決勝トーナメント進出を決めるのでした


 だからこそ、そのチームをベースに挑んだザッケローニ体制は大きなる期待を持って国内の評判もよく”いい準備をして望むこと”ができているように見えました


 2014年のブラジル大会はコートジボアールと互角以上に戦っていたが、エースドログバが途中出場するととたんに乱れて敗戦、第二戦は1人少なくなったギリシャに徹底的に守られてスコアレスドロー、そしてコロンビアに1対4で敗れ、ハメス・ロドリゲスに得点王をアシストして大会を終えました


 ロシア大会はこれまでの流れで行くと決勝トーナメントに残れる大会ということになるわけですが、正直グループHはこれまでで一番難しいグループだと僕は思いました


 三戦全敗


 僕にはどうひいき目に見ても勝ち点1を取るのがやっとだと思っていたのですがね


 ボールは丸い

 どう転がるか、わかったものではないというのが、決勝トーナメント進出を決めた今日の感想です


 では、また次回

 虚実交えて問わず語り

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