第59話 機械仕掛けの神の手の上で踊る恋
人を好きになるというのは、人間の機能である
機能である以上、能力があり、優劣や強弱や得て不得手があり、調子の波もあれば、劣化もするし、壊れたりもする
問題は好きになるのは心なのか、身体なのかといいうことだが、それは右手と左手を目の前で力いっぱいあわせて「さて、今の音は、どちらの手が鳴ったか?」という問答に等しい
つまり右利きの人もいれば左利きの人もいる、どちらも使えて、相手に合わせることができる人もいる
と、こんなことを考えちゃうのがもうだめというか、残念というか、プログレなんですよね
気持ちのいいことを一度、理屈に落とさないと楽しめない性分(サガ)
我がバンドのイケメンギタリストは、音楽的な理論や理屈やあるべき姿をしっかりと理解しているうえで、めちゃくちゃワイルドなプレイをする
計算した範囲で許される自由を、気持ちがいいことだけに費やすことができるというのは、本当に強みだと思う――後ろで見ていて頼もしい
そんな彼は、こと女性に関しては出会う人、出会う人、なにかしらわけアリ
外国人であったり、バツイチであたり、子持ちであったり、その複合であったり
”何もわざわざ面倒を背負い込まなくても・・・”と一般的には言われてしまうでしょうが、なんの因果かしりませんが、彼は今、その道を極めようと”悠久のかの国”に渡っております
わざわざ面倒を選ぶというのはそれはプログレッシブなのかもしれない
しかし、ここで大事なことは、複雑さや難解さがプログレッシブの真髄ではないということです
結論から言えば、イケメンギタリストはプログレッシブではない
なぜなら、彼は何も考えていないからです・・・と勝手に決め付けても可哀想ですが、大事なことはここ!
プログレはモテナイ!
ビジュアル系をこじらせたイケメンは、所詮イケメンです
顔でギターを弾くやつに、プログレは似合いません
そのくらいいい男なのだから、世の中の面倒を多少でも背負ってもらわなければ、バランスが悪いという因果律が働いているのでしょう
デウス・エクス・マキナ「機械仕掛けの神」(*1)の計らいです
僕は右手の恋と左手の恋が別々であることを知っているし、右でも左でもない無意識下でのセーフティネットが働くことを知っている
だから心にも身体にも従わず、無意識を警戒しながら、僕のブルースを奏でる
まどろっこしくて、迂遠で、軟弱で脆弱
だから組み合わせを色々試し、組み立てては壊し、動かしては止めて、それでも前に進むのです
自分の中のブルースを進化させるために
では、また次回
虚実交えて問わず語り
注釈(*1)デウス・エクス・マキナ
演出技法の一つ
古代ギリシアの演劇において、劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ存在(神)が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決に導き、物語を収束させるという手法
使用例 ゲーテ『ファウスト』
ファウストはメフィストフェレスと「時よ止まれ、汝はいかにも美しい」と言えばメフィストフェレスに魂をゆだねるという契約を結んだ。終幕で彼はこの言葉を吐いて絶命し、メフィストフェレスは彼の魂を地獄に運ぼうとするが、唐突に現れた天使やグレートヒェンの霊によって遮られ、神による救済に至る。
(wiki)
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