第4話 瀕死のエルフ
夜空に輝く3つの月を見て、俺は自分が異世界に来たという事を受け入れざるを得なかった。
さっきベルギウスが言っていた事を必死に思い出す。
レオンハルト王国?
母が大賢者のマルゲリータ?
そういえば、母を探さないといけない。
その前に俺は現実世界に帰れるのか?
考えても答えの出ない問いばかりが頭にうかんだ。
夜も更けて来たが、とても眠れる気分ではなかった。
ふと、池の対岸に人影が見えた。
怪我をしているのか、足を引きずっていると思った矢先、倒れてしまった。
倒れた人をこんな森で見続けているわけにもいかず、俺はそばに寄った。
エルフだった。
真っ白な肌。尖った耳。
真っ赤な髪は月明かりに照らされてキラキラ輝いていた。
「なんてキレイな人なんだ…」
一瞬、会社の
ガサガサガサっ
向こうから何か大きなものが近づいてくるのが分かる。
このままここにいたらマズイ。
だけど、人1人を背負って動物から走って逃げることは不可能だ。
迷ったのはほんの少しの時間だったが、熊のような大きなモンスターは素早く目の前に現れ、あっという間に俺に打撃を食らわせ、俺は吹っ飛ばされた。
「イッテー…」
運良く大ダメージは食らっていない。まだ動ける。
だが迷っている暇はない。
逃げるなら逃げる、戦うなら戦わないといけない。
あいにく、俺には剣道、柔道、そういった類ものを習った事はまったくなかった。
喧嘩だってしたことない。
まずは態勢を立て直そうと、起き上がろうとした時、何か硬いものが手に当たった。
エルフが持っていたと思われる、細い剣だった。
その剣を持った瞬間に自分の中に熱い何かが湧き上がって来た。
どうせここは現実世界ではない。
見ている人も誰もいない。
馬鹿にする人間もいない。
ダサくたっていい。
だったらやるだけやってやる!!!!!
今にも熊はエルフを襲おうとしていた。
俺は熊の背中に向かい、迷わず剣を振るった。
熊がこちらを振り向くと、リーチの長さに驚愕する。
この剣では、そう簡単には届かない。
熊の攻撃をかわしながら、なんとか反撃を食らわすが、あまりダメージを与えていないように見える。
それどころか、熊の攻撃は強く、何とかかわしているが、その風圧だけでかすり傷ができる。
このままでは、間違いなくやられる。
あらためて見ると、熊は俺よりも2倍は大きい。
焦りと恐怖で、体が固まった。
熊が手を振り上げて攻撃態勢にはいった。
攻撃するか、避けるか、どうしたらいいんだ!
体が恐怖で動かない。
ああ、もうダメだっ!
「火の精霊よ、大地に眠るマグマの灼熱をここに集め、龍となって焼き尽くせ。」
と声が聞こえたかと思うと、周りが急に赤い光に包まれた。
声の方をみると、炎の龍が出現し、そして勢いよく熊に襲い掛かかった。
巨大な熊を、あっけなく貫いた。
熊は倒れ、動けなくなった…。
「シルヴィオ様!お怪我はございませんか!」
「ベルギウス…、ありがとう。めちゃめちゃ助かったよ。」
「先程は私の配慮が足りなく驚かせてしまって申し訳ありませんでした。
夜も更けましたし、いったん館に戻りましょう。」
エルフは見捨てて行くわけにもいかないので、館に連れて帰った。
元気に目を覚ませば良いのだが…。
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