第185話 06.最後の決戦
●●●フローマー●●●
ベルギウスは警護の人に馬車にもどるように強く促されて、戻って行った。
「猫から人間に代わる姿をみられていなければ、問題ないだろう。」
焦ったけど、ドミニクさんの言う通りだ…。
大丈夫、まだナナ=フローマーってばれていない…。
ノーラ王妃を倒しに行くのは深夜だから、その時間には猫の姿に戻るし大丈夫…。
◆◆◆ベルギウス◆◆◆
ティアナとの結婚式が終わった。
急いで着替えて、仲間と合流しレオンハルト王国に向けコルネリア王宮を発った。
式の途中で、群衆の中にナナちゃんを見た気がする。
あれは絶対ナナちゃんだと思うけど、ナナちゃんがこの世界にいるわけがない…。
気になるけど、今は恐ろしい魔術をあやつるノーラ王妃を倒す事が第一優先事項だ。
今日の杖は、マルゲリータが生前使っていて、マリアンネ・ヴァルプルギスと刻印のある杖だ。
マルゲリータ様、とうとう、最終決戦です。
どうか僕に力を貸してください。
そして、この呪いを終わらせなければなりません!
ヴァルプルギス村で入手した、魔力定常化の指輪を装備した。
シングルムーンだけど、これで僕の魔力は落ちない。
絶対ノーラ王妃を倒す!!!
時間は深夜1時を回っていた。
レオンハルト王に話は通っているとはいえ、一国の王妃を倒しに行くのだ。
人目のない深夜の間に戦う予定だ。
僕たちは早歩きでレオンハルトに向かって歩いていた。
モフモフで可愛いフローマーはドミニクと肩を並べて歩いていた。
最近、結婚式の準備やノーラ王妃討伐の作戦を練るのに忙しくてあまり一緒にいられなかった…。
僕が結婚式で忙しくしている時、フローマーはドミニクと一緒に過ごしていたようだった。
なんだかよくわからないけど、小さな不安が心の中によぎって、思わず声をかけた。
「フローマー、最近忙しくて、一緒に時間をすごしていなかったな。寂しかっただろ?」
「にゃー。」
気のせいか少し冷たい返事のような気がする。なんか喜ぶような事、無いかな…。
「ノーラ王妃を倒したら僕はコルネリア王宮に住むことになるんだ。フローマーも一緒に来てくれるよね?」
「にゃ、にゃーん…。」
あれ?あまり喜んでくれなかった…。
自分自身に驚いたのだけど、僕はフローマーが喜んで来てくれるって思っていて、そしてその自信があったんだ。
フローマーはずっと僕の側に居てくれるのだと信じて疑わなかった。
もう、僕よりドミニクの方が良くなってしまったのか…。
同じ人獣だし…。
フローマーのいない生活なんて、正直信じられない…。
「フローマー、僕には君が必要なんだよ。」
これからもずっとフローマーと一緒にいたい。
でも、フローマーがドミニクを選んだのなら、それは受け止めるしか無いな…。
すっきりした気持ちで戦いに挑みたかったのに、失敗した。
でも、ここは気持ちを切り替えて、戦いに集中だ!
★★★
ノーラ王妃は今夜、通常通り寝室で寝ているという情報だ。
剣士10名、エルフ10名、ドミニク、フローマー、僕の総勢23名で、深夜のレオンハルト城のノーラ王妃の寝室がある階まで登った。
もちろん王様には話してあるので、ノーラ王妃の階までは問題なく上ることができた。
問題はここからだ。
ここからは王妃専属の護衛がいる。
僕たちは計画通り配置についた。
窓から見える夜空には第3の月が一つだけ、ぽっかりと浮かんでいる。
今日のシングルムーンは、僕たちの戦いを応援しているかのように煌々と輝いている。
時間だ。
ドミニクを先頭にし戦士5名が、ノーラ王妃の寝室に突入した。
王妃の護衛と戦い始める!
「いったい何事!」
夜中に人が暴れまわる音が聞こえれば、驚いて誰でも起きるだろう。
ノーラ王妃はバルコニーの方に逃げ出した!
バルコニーは普段王妃や王女達が塔の下に降りなくても、少し散歩できるような広場になっていて、普段はここでお茶をしたり、優雅に過ごす場所だった。
ノーラ王妃が逃げた先には、残りのメンバーが待ち構えている!
袋の鼠だ!
「無礼者!こんな事をして許されると思っているのか!」
王妃の手には、杖が握られている。
こんな短時間でも杖だけは持ってきたんだな…。さすが侮れない。
「ノーラ王妃、あなたはヴァルプルギス村の禁忌の魔術を使い、多くの人の魔力を吸いすぎました。
自分の欲望のために、一人や二人でなく、多くの人を犠牲にして…。
許さない!」
僕と黒魔術師たちが一斉に呪文を唱える。
金縛りの術なんて生易しい術を唱える者はいない。
全員、光の魔術だ!
ノーラ王妃が闇属性の魔術を使うのはマルゲリータの日記から知っていた。
闇属性には、光属性の魔術しか効かないため、ティファーをはじめエルフ達はこの日のために、光の魔術の強化に努めてきた。
光の精霊が一斉にノーラ王妃に向かっていく!
それをノーラ王妃は全て杖一本で弾き返した!
そんなばかな!精霊を弾くなんて!人間技とは思えない!
ノーラ王妃の杖は紫色に輝き、魔力があふれ出ていた。
あ、あれはもう魔力というより、妖力と言った方が近いような禍々しさだ。
しかも闇属性には強いはずの光属性をいとも簡単に弾くなんて!
そして短時間で聞いたことのない呪文を唱えたと思うと、5匹のイフリート(火属性)が現れた!
3メートルくらいはありそうな大きさで、ドミニクよりもはるかに大きい!
体中が炎に覆われ、するどい爪と大きな牙ものぞかせている。
そんな大きな召喚獣を5匹も一度に召喚するとは!
2本足で立ち、近距離攻撃がノーラ王妃に近寄れないように、立ちはだかった!
近距離攻撃の剣士10名、ドミニク、フローマーは、イフリート5匹との戦闘を開始した!
僕と黒魔術師たちは、休みなく魔術をノーラ王妃めがけて唱えている!
全てはヒットしないが、時々ノーラ王妃にあたり、ダメージを与えているようだ!
しかし、やはりシングルムーンなので威力は弱い…。
でも少しでもダメージを与え続けなければ!
ノーラ王妃は、闇属性魔術デスの魔術を放った!
30%のメンバーが死んでしまう恐ろしい魔術だ!しかも範囲攻撃!?!?
エルフと僕の11人全員がデスの魔術を受けた。
アッという間に、3人が死んでしまった。
でもこれは大丈夫!
白魔術師がすぐさま蘇生術をかけて生き返る!
それを見たノーラ王妃は白魔術師に向かって、ダークネスアロウを唱えた!
闇属性のアロウが雷のごとく白魔術師に向かっていった。
白魔術師5人が全滅!!!!!?
「ティアナ!!!」
ティアナに駆け寄ったが、即死の状態だ…。
蘇生術は時間が立つと効かなくなってしまう。急いで蘇生しなければ!
僕もあまり得意ではないが、蘇生術はかけられる。
「大地に満ちたる生命の素子よ、命の…ぐっ」
ノーラ王妃は魔力吸収の魔術を唱え、僕の魔力を吸収した!
くっ、蘇生術を唱えるための魔力が足りなくなってしまった!
ティアナを蘇生できない!
早く戦闘を終わらせなければ…。
さらにやっかいな事に、僕から吸収した魔力で、自分のダメージを回復している!?
やはり人間相手はモンスター相手と違う…。
こっちの考えを読んで攻撃してくる…。
思った以上に魔力を吸収されてしまった…。
もう本当に少ししか魔力は残ってないみたいで、体中がだるくて動けない…。
次に魔力吸収を食らったら、僕も死んでしまう…
ノーラ王妃の前に立ちはだかり壁の役割をしていたイフリートをドミニク達が全部倒した!
「ノーラ王妃を倒せええええええええ!」
ドミニク達はノーラ王妃に向かって走ったが、ノーラ王妃は闇属性サラマンダー1匹を召喚した!
一匹だがデカい!
さっきのイフリートの5倍はありそうだ!
本当にシングルムーンで魔力が弱っているのか?!
剣士たちはサラマンダーに斬りかかるが、全くダメージを与えてない!
強すぎる!
サラマンダーは口から闇の業火を吐き出し、あっという間に剣士は全滅した!!!!!
「んにゃああああああああ!」
フローマーだけが闇魔法耐性があるので生き残った!
そして、聖なる剣でサラマンダーに斬りかかった!
「まて!フローマー!奴に物理攻撃は効かない!下がれ!!!!」
僕の叫びは、遅すぎた。
フローマーは大きく振りかぶってジャンプしていた。
そして、切りつけた!
「ぐああああああああああああああ!」
サラマンダーは大きくうなったと思ったら、そのまま消えて亡くなってしまった。
そうか!
フローマーの剣は光属性だ!闇にはすごい威力をはっきりする!
「貴様ぁ…。光属性の武器をもっているとは…っっっ」
ノーラ王妃はすごく悔しそうだ。
そして火属性の魔術を立て続けにフローマに向かって唱えた!
ノーラ王女の近くにいたフローマーは火の魔術をよけるために、徐々に後ろに後退させられてしまった。
そしてすぐに、デスの範囲魔法、魔力吸収、火属性の魔法を立て続けに唱えて、黒魔術師を全滅させた!
残ったのは、僕、ドミニク、フローマーの3人だけになってしまった…。
ノーラ王妃は僕めがけて、魔力吸収の魔術を唱えた!
自分の体力を回復するつもりだ!
しかし僕の魔力ももう残っておらず、だるさで体が言う事を利かない。
この魔力吸収を直撃したら、僕も死んでしまうのに!
くっ、よけきれないっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます