第186話 07.最後の時

 くっ、もうだめか!よけきれないっ!


 ジジジジジジ!


 電気がほとばしるような音がしたと思って目を開けると、フローマーが聖なる剣を掲げ、魔力吸収から僕を防御していた!


「んにゃあああああああああ!」


 フローマーの魔力が吸われ始めた!?


 人獣って魔力あったっけ?いったい何が吸われているんだ?!


 魔術の反射がまぶしくて、姿があまり見えないのだが、みるみる縮まっているような?


ひ、人の姿に!!!!?


 ノーラ王妃がフローマーへの魔術に集中している隙をついて、ドミニクがノーラ王妃に会心の一撃を加えた。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 王妃が痛がっている!


 その隙に僕はフローマーに駆け寄った!


「フ、フローマー?」


 フローマーが着ていたマントの下に人間の手が!


 僕を見上げたその顔は……、


「ナ、ナナちゃん?!」


「ば、ばれちゃったね。とうとう…。


 ごめんね…。いままで黙ってて。」


 フローマーがナナちゃんだったなんて!


 なんでナナちゃんが異世界にいるんだ?


 呪いのお香は現実世界で絶望を感じた人の前に現れるはずだ。


 ナナちゃんのような可愛くて性格も良くて、有名な女優さんがいったいどうして絶望を感じてしまったんだ!?


 今まで僕がフローマーにしてきた事が蘇る…。


 胸を触ったり、一緒にお風呂に入ってくまなく体を洗ったり、一緒にベッドでも寝たし、ティアナとキスしたことも話したり、ティアナと結婚したり……。


 ひいいいいいいいいいいいいいいい!




 ノーラ王妃はイフリートを一匹召喚した!


 もう5匹を召喚するほど魔力が残っていないのだ!


 ドミニクがイフリートを相手にしている。


 

 頭の中を激しく整理する必要があるが、そんな暇は微塵もない。


「ナナちゃん…、大丈夫?」


「うん。いろいろあると思うけど、今はノーラ王妃を倒さなきゃっ。」


 ナナちゃんは、起き上がった。


 そんなにダメージは受けていないようだ。良かった。


 でもナナちゃんは人間だから、パワーも俊敏も、フローマーの時よりもずっと弱くなってしまった。


「ナナちゃん、王妃に向かって走れる?!僕が援護する!」


「信じてる!壮太君!」


 ナナちゃんは王妃に向かって走り始めた。


 ノーラ王妃は水の魔術をナナちゃんむかって唱えた!


 水の精霊がナナちゃんに向かって来たが、ナナちゃんはジャンプして上手に避けた。


 僕はジャンプしたナナちゃんに向かって風の魔術を唱えた。


 

 僕に魔力は残っていなかった。


 これ以上魔術を唱えると、生命力を魔力代わりに使う事になる。


 それでも僕は魔術を唱えた!


 風の魔術は他の魔術よりも、消費魔力が多いので、この状態で使うのは危険だった。


 それでも、今はこの魔術しかない!僕は迷わなかった!



 ノーラ王妃を生かしておいては、いけない!


 もう、この呪いによって人が消えていくのを見るのはうんざりだ!

 


 風の精霊は、上手にナナちゃんをサポートして、ナナちゃんをノーラ王妃の元へ運んでいく!


 速度と勢いを増して、ナナちゃんはノーラ王妃に向かった!!!



 これ以上、ノーラ王妃をのさばらしてはいけない!


 倒さなければならないんだ!!!!!!!


 ナナちゃんは聖なる剣を手にノーラ王妃に斬りかかった!!!!!!!


 行けええええええええええ!!!


 ナナちゃん!!!!!!!!!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る