6章 マルゲリータの日記
第165話 01.王宮学校
ベルギウスはレオンハルト王国の書斎にいた。
ここは、マルゲリータがレオンハルト王の参謀として働いていた頃に使っていた執務室だ。
膨大な書類があるが、以前マルゲリータの日記を見つけたのだ。
いくら故人とはいえ、他人の日記を読むのは良くないと思い、その時は日記を閉じたのだった。
しかし、尊敬するマルゲリータが、呪いの術者と思われるマリアンネの杖や、禁忌の魔術書を所有していたことから、マルゲリータが深く関係しているのではないかと思わずにはいられない。
それに、マリアンネの居所が皆目見当がつかない。
何かこの日記からマリアンネとマルゲリータの関係が分からないか。
マリアンネの居所のヒントがあったりしないか…。
あの時は閉じたが、今は事情が違う。
日記を読ませてもらうことにした。
◆◆◆
今日から、コルネリアの王宮管轄の学校、その名も王宮学校で勉強する事になった!
この学校は、国中から優秀な子供たちが集められて、大臣になるための勉強をする学校。
そんな学校に通う事ができるなんて、なんとも光栄な事だ。
王子様たちもこの学校に通って、一緒に学んだりする事もあるとの事だ。
私のクラスには素敵な王子様がいたらいいのだが…。
なーんて期待も膨らむ。
いかんいかん。
王宮学校に通えるなんて、とっても名誉な事。
浮かれてないで、村の恥にならないように、一生懸命勉強しなくては。
不安が無いわけでは無い。
なんと言っても両親の事を思い出すと、とても寂しくなる。
そんな時は、村を出るときに、お母さんがプレゼントしてくれた筆箱をながめる。
ちゃんと勉強しなさいという意味と、筆箱は人目につくから、田舎者でも恥ずかしくないようにって、お母さんが丁寧にキレイに刺繍してくれた筆箱。
私の宝物。
この筆箱を見ると、頑張らなくてはと心底思う。
王宮の近くまで来たけど、見上げると腰が折れそうなくらい高い建物!
そんな高い建物を世界樹が取り込んでいる!
自然と人工物の融合がこんなにかっこいいとは!
これがコルネリアの王宮…。すごすぎて、腰が抜けそう。
案内書にはこの建物の2階に王宮学校があるって書いてあるが、ここか?
時間ギリギリだな。
生徒はすでに15人くらい席についていいる。
どこに座ったらいいんだろう。
まぁ空いているところに、とにかく座ろう。
生徒たちは、男子もいれば、女子もいる。
コルネリア王国の王宮学校だからエルフばかりかと思ったら、人間が二人いる。
たまたまその人間が隣の席が空いているので、座ることにした。
意外と…、整った顔をしているな…。
「始めまして、俺はディートリッヒ3世。君は?」
目が合ってしまったので、向こうから挨拶してくれた。
ディートリッヒ3世って、レオンハルト王国の王子じゃないか?!
「は、はじめまして、私の名前は、マ、マル、ゲホっ、ゲホッ」
「ハハハ、君の名前はマルゲかい?ダッサイ名前、犬みたいだ。ハハハ。」
びっくりするくらいハンサムで、しかも王子様なんて、緊張して声がつまってしまった…
でも、性格はちょっと悪そうだ。
隣にいたもう一人の人間も挨拶してくれた。
「僕はゲールノートです。よろしくお願いします。」
丸眼鏡を掛けた気が弱そうな男の子だけど、こんなやつと一緒にいて大丈夫なのだろうか。
そんなディートリッヒ王子に、気品漂う身なりの男の子が声をかけてきた。
「ディートじゃないか、久しぶり!」
「アクセル!お前もいると思ってたよ。」
ア、アクセルって、アクセル16世の事?
コルネリア王国の王子か!
ルビー色の瞳、すっとしている鼻筋、これまた目見麗しい…。
コルネリアとレオンハルトの王子様が二人もここにいるなんて、すごいクラスに入れたもんだ。
両方とも仲良くなって、良い印象を与えて、将来の出世につなげてやる。
★★★
ベルギウスは感心していた。
人間のマルゲリータがエルフの国であるコルネリアの王宮学校に通うなんて、すごい事なのではないだろうか。
現実世界で言うと、交換留学生みたいな?そんな感じだろうか。
それに、マルゲリータは子供のころから勉強熱心で、そして出世欲も強かった事がわかった。
やはり王様の右腕までにのし上がったのには、子供の頃からしっかり勉強し、出世欲もあり、世渡りも上手だったのだろうと想像した。
そういえば、マリアンネもコルネリアの王宮学校で学ぶために王都に来たはずだ。
二人は王宮学校で知り合ったのか?
マルゲリータの日記にマリアンネが出てきたら、いろんな謎がとけそうだ。
期待に胸が膨らむ。
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