第44話 ツークシュ山への道すがら〜ただただ歩いていると、いろんな事、思い出しちゃう。〜


 私たちはレオンハルト王国に集合し、必要な物資を荷台に乗せ、部隊を組んで出発した。



 人獣は不思議でしょうがない。


 初めて人獣に会ったのは、マルゲリータ邸のフローマーで、すごく可愛かった。


 でも、ビーバー退治のパーティにいる人獣は戦闘タイプなので、見た目が怖い…。



「ちょっと、あなたお風呂に入ったのはいつなの?!臭いわ!」


 ティアナは綺麗好きすぎるところがあるので、イノシシ型の人獣の野生臭さが耐えられなかったみたい。


「ティアナ、失礼だよ!そんなこと言ったら!」


 私は慌てて止めたが、イノシシ達は全く気にしていないみたい。


「ガッハッハッハ。


 俺たちの野性味あふれる匂いがなんだって?


 男臭くていいだろう?ガッハッハッハ」


 よくわからないけど、そのガッハッハにつられて笑ってしまい、なんでも許せてしまう。


 見た目怖いけど、おおらかで、細かい事は気にしないし、重い荷物は持ってくれるし、力持ちだし、ティアナも匂いは我慢して、打ち解けてきた。



「ティファニー様、そちらの美人な方を紹介していただけませんか?」


「あら、ベルギウス。私の姉のティアナよ。同じ白魔術師なの。」


 ティアナには、どうしてベルギウスと知り合いなのか問い詰められた。


 レオンハルトの森での出来事を説明したけど、シルビィオ様に助けてもらっただなんて!!!と、ティアナはものすごく羨んでいた。



 ベルギウスはずいぶんエルフ達と仲良くなっているみたい。


「火の魔術の詠唱中に、友達がくすぐってきた事があってですね、呪文に集中できずに、変に唱えてしまった事があるんです。


 すると炎が少ししか出なくて、挙げ句の果てに火の精霊が怒ったのか、こっちに向かってきて、僕の髪の毛に引火したんですよ!その日から僕の髪の毛はチリチリで…。」


 エルフ達はベルギウスの話に腹を抱えて笑っていた。


 火の精霊が怒るとかありえないし、ベルギウスの天然パーマが火の精霊が原因のはずがないし。


 適当な作り話が面白すぎて、しかも、エルフ以外で魔術の話ができるという共通点が、親近感を持たせたらしく、あっという間にエルフの間で人気者になっていた。



 ベルギウスとは、副隊長同士、後方支援同士で、戦略を確認したいからと言われ、2人で話す事も多かった。


「ところで、最初に会った日に、あそこで何をしていたの?」


「恥ずかしいのだけど、薬草を探していたの。


 レオンハルトの植物はコルネリアと種類が違うから、つい夢中になって見ていたら、モンスターに遭遇してしまったの。」


「僕の家にマルゲリータ様の薬草図鑑あるよ。


 あ、それに、レオンハルトの植物採集するなら、マルゲリータ邸を使ったらいいよ。客室は余ってるし!」


「うわぁ、とても素敵なお話ね!薬草図鑑とても見てみたいな!


 無事に帰ったら、是非、お願いしたいわ!」


 ベルギウスは話やすくて、共通の話題もあり、話が尽きない。



 見た目は高校生くらいかな。


 そういえば、最近、ゆっくり話すようになって気がついたのだけど、現実世界のスポーツ選手に似てる!


 有名女優と付き合ってるとかって騒がれてた人!



 まさか、同一人物のわけないよね。ふふっ。



 休憩時間が終わり、ツークシュ山に向けて、ひたすら歩く。



 黙って歩いていると、いろいろ思い出したり、考えたりしてしまう。


 異世界では、素敵な仲間がいて楽しいのに、現実世界では…私は昨日の最悪な誕生日を 思い出した。


 思い出してたら涙が出てきた。


 ちょうど休憩時間だったので、1人になりたいと思って、部隊から少し外れた。


 その時、私の肩つかんだ人がいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る