第146話 15. 私の人生、大変すぎませんか

 お母さんが猫にしてくれたのと、聖なる剣のおかげで、夜にモンスターに襲われても死ぬ事はなかった。


 モフモフが毒針をすべて弾いてくれるから、全然刺さらなので何ともない。


 聖なる剣のおかげで、簡単にモンスターを倒す事も出来た。



 ヴァルプルギス村からかなり離れると、モンスターの属性が急に変わった。


 闇属性のモンスターは全くでなくなって、木、水属性が多いかな。


 それで気が付いたんだけど、聖なる剣が全然使えない!


 闇属性以外のモンスターには全くダメージを与えられないの!


「なんて役に立たない剣なの?!」


 捨てようかとも思ったけど、お母さんが最後に私に渡してくれた剣。


 とても捨てられなかった。


 使えない剣を装備したまま、なるべく戦闘にならないようにモンスターを回避しながら旅を続けた。


●●●


 私はコルネリア王国の王宮を目指していた。


 ヴァルプルギス村から出たことがないから、村の外に知り合いなんていないし、村の外の事なんて、何も知らなかった。


 でも、唯一知っていることがあった。


 それは、マリアンネお姉ちゃんがコルネリア王国の王宮で黒魔術の勉強をしているって事。


 猫の姿になってしまったから、会っても分からないかもしれないけど、唯一の行く宛がマリアンネお姉ちゃんしかない…。


 王宮を目指そう。


◆◆◆


 「マリアンネ・ヴァルプルギスさんを探しているのですが!」

 

 王都について、通りすがりのエルフ達に声をかけるが、エルフ達には「ニャー!」としか聞こえないようで、相手にされない。


 探しても、探しても、マリアンネお姉ちゃんは見つからない…。


 もうしばらくの間、ご飯もろくに食べていない…。


 おなかすいた…。


 行く当てもなくなり、森の中で一人泣いた。


 生贄にされて、人間になって、今度は猫になって、私の人生って波乱万丈過ぎない?


 生きていくって大変だって誰かが言ってたけど、私って大変過ぎない???


 みんなこんなに大変なの?!?!



「おや、こんなところで何をしているんだい?」


 森の中で一人、途方に暮れていたら、優しく声をかけてくれた人がいた。


 こ、この声はマリアンネお姉ちゃんだ!


 私は涙をぬぐって、その人を見た。


 お姉ちゃん!


 自分の明日がまったくどうなるか保証されない不安の日々、お姉ちゃんが居てくれたら、どんなに安心か!


 大きな期待と共に、私は激しく振り返った。



 そこにいたのは、見たこともない、人間のおばさんだった。


 マリアンネお姉ちゃんではなかった…。完全なる人違い…。


 がっかり…。



「お前、ヴァルプルギス村から来たのかい?なんか村の気配を感じるよ。」


 そのおばさんは、しげしげと私を見て行った。


「お前には複雑な魔術がかかっているね。そうとうな訳ありと見た…。」


 おばさんはコルネリア王国の賢者、マルゲリータと名乗った。



 行く宛が無いのを察してくれたのか、マルゲリータ様はお屋敷にしばらく置いてくれると言ってくれた。


 本当に良かった。


 このまま野山で、野生の猫としてネズミを取って生きていくのかと思った…。


 ありがとう、マルゲリータ様。


 名前もフローマーとなづけてくれた。


◆◆◆


 ただでお屋敷に置いてもらうのは忍びないので、マルゲリータ様から、お料理、お掃除、その他お屋敷の管理を一つ一つ教わって、覚えて、働くようにした。


 マルゲリータ様は、私のように、日本とこの国を行ったり来たりしている人の面倒をみているようだった。


 そして、時々魔力切れのような現象を起こして、消えて亡くなってしまう人たちを見た…。



 そんなある日、突然、彼がやってきた。





 



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