第134話 03.呪いのお香

 夜になった。


 村の中は安全とは知ってるけど、檻の中で独りぼっちの夜は怖いよ。

 だって、私、まだ15歳、子供だもん。


 しかも、今日は運の悪いことにダークムーン…


 ダークムーンは5年に1度ある現象で、3つの月が重なることで、一つも月が輝かないという現象が起きる日だった。


 私たちエルフにとっては、一番魔力の高まる日…。


 でも、そんなこと、今の私には関係ない。


 檻に閉じ込められた日に限って、ダークムーンなんて…。

 月が一つもないから、本当に真っ暗で怖い。

 

 お父さん、お母さん、早く迎えに来て…。

 

 村の外に出てしまって、ごめんなさい。

 二度と、二度としませんから…。


「お母さーーーーん、お父さーーーん!」


 怖さのあまり、泣きながら叫んでみるけど、声は暗闇と静寂に吸い込まれてしまい、誰にも届かないような、そんな気がする。


 しばらくたつと、灯りを持った村長さんが現れた。

 

「村長さん、本当にごめんなさい!


 私、もう二度と勝手に村の外には出ないので、どうか許しくてださい!」


 村長は、何も言わずに地面にお香を置く。


 呪文を唱え、杖の先から小さな炎を出すと、お香に火をつけた。


「ナターシャ、怖い思いをさせたな。もう大丈夫。


 このお香の香りをかいでごらん。心が落ち着くから。」


 なんのためにお香?

 

 不思議だけど、村長さんのいう事に間違いない。

  

 独特な甘い香りが、恐怖で満ち溢れていた心を癒してくれるような感じがする。


 ふと、眩暈を感じたかと思うと、私は意識を失った。


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