第135話 04.生贄
意識は朦朧としている。
さっきのお香を嗅いでからからだ。
体も全くいう事を利かない。
たぶんだけど冷たい石の上に寝かされていると思う。
周りには、村長さんと、村の大人たちが数人いる…。
頭の中で脳みそがグルグル回っているようで、すごく気持ち悪くて、はっきりとは分からないけど…。
お母さんとお父さんがが叫んでいるみたい…。
「村長さん、どうかナターシャを生贄に選ばないでください!!!
どうしてナターシャなのですか!」
いけにえ… どういう事…?
お母さんの横に、隣の家のおばちゃんがいて、抱きしめて慰めている。
「誰かが、誰かが犠牲にならなきゃいけないんだ。」
「だからって、どうして私の娘なの!!!
それに、禁忌の魔術書は村から消えてしまったではないですか!
こんな難しい魔術、魔術書なしで再現できるのですか!!!!」
村長が片手をあげると、村の男たちがお母さんとお父さんをその場からどこかへ連れて行ってしまった。
村長が私に話しかけた。
「ナターシャ、許しておくれ…。
今年は干ばつがひどくて、誰かを生贄として捧げないといけないのだよ。
我が村のため、どうか理解しておくれ…。」
朦朧とする意識の中、マリアンネお姉ちゃんの話を思い出した。
5年に一人、行方不明の子供が出るって…。
やっぱりあの話は本当だったんだ…。
村長は、私の周りに魔法陣を描き始めた。
お香を私の周りに無数に置く。
村長の合図により、その場にいた大人全員が呪文を唱え始める。
寝ている私の頭の上を、お香の煙が渦を巻いて天に向かって登っていく。
もう目を開けているのがつらい。
目をつぶると、だんだん気持ちよくなってきた。
すっと、私の魂が体から抜けるような感覚に陥る。
お香の煙とともに、私の意識は夜空へと消えていった。
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