第45話 赤い宝石のついたネックレス〜落ち込んでる時にステキなプレゼント…純粋に嬉しい…〜

 1人だと思って、遠慮なく涙を流していた。


 そこに急に鈴木さんが現れて、泣いているところを見られてしまった…。


 鈴木さんが涙を拭いてくれたので見上げると、ビックリするくらい近くにいたので、ちょっと驚いた。


「びっくりさせてごめなんさい。私、最近失恋しちゃって。」


 こんな姿、よりにもよって鈴木さんなんかに見られたくなかった。



 気分転換に、少し先にある花畑に行かないかと、鈴木さんが誘ってくれた。


 慰めようとしてくれてるのかな。


 会社ではほとんど話したことないけど、案外、良い人なのかもしれない。


 お花畑のそばに2人で腰をかけた。


「わぁ、とてもキレイ…。」


 黄色い花は満開で、すごくたくさん咲いていた。


 黄色い花達は言葉を喋る花達だった。


 小さい声でか細く話しかけてくる。


「どうしてここに来たのー?」

「お姉さんキレイー。」


「ふふ。ありがとう。とても嬉しい。」


「お姉さん達付き合ってるのー?」


「えっと、そういうわけじゃないの。」


「ここでよく、カップルがチューしていくよー。お姉さん達はしないのー?」


「ちゅ、ちゅー?。し、しないよ。私が悲しんでたから、この人は慰めてくれてるだけなの。」


 こらー!!!!鈴木さんとちゅーなんてありえないでしょーーー!


 変なこと言うなー!黄色い花めーーーーーーー!


 私の心の声を読んだかのように、鈴木さんが声をあげて笑った。



 この人って笑うんだ。


 あまりに笑うものだから、なんか可笑しくなってしまって、私もつられて笑ってしまった。


「お兄さんのポッケに何か入っているー。」

「なんかポッケから見えてるー。」


「お、お前らなんでもお見通しなんだな。」


 そういうと、鈴木さんはポケットからネックレスを出した。


「これ、偶然見つけたんだけど、君に似合いそうだと思って買ったんだ。


 よく行く鍛冶屋の隣に、女性用の防具店があって、そこに並んでたんだけど、この赤い宝石を見た時に君の事を思い出して…。」


「これ、私へのプレゼント?貰っていいの?」


 鈴木さんは照れ臭そうに笑いながら頷いた。



 誰もくれなかった、誕生日プレゼント。


 彼氏からアクセサリーをもらうのが、ずっと前からの夢だった。



 泣いて過ごした昨日の誕生日を思い出した。


 彼氏からじゃなかったけど、おっさんの鈴木さんだけど、誕生日は昨日だったけど、誕生日おめでとうって言われた気がした。



 はじめての男の人からのプレゼント。

 夢にまで見たアクセサリーのプレゼント。



 鈴木さんだけど、相手が、鈴木さんだけど…本当に嬉しかった。


「こんな素敵なプレゼント、男の人からもらうの始めて…すごく嬉しい…」


 鈴木さんの優しさが、すごく嬉しかった。


 鈴木さんは私の肩を抱きしめて、何も言わなかったけど、元気出せよって言ってくれてるんだと思った。


 ありがとう、鈴木さん…。

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