第25話 久しぶりの
俺は自分自身が情けないと思うし、ダサいと思う。
二度と異世界には来ないと誓ったが、少しだけ、どうしても少しだけ、様子を見るくらいなら、たまには良いだろうと、お香を焚いた。
遠くからマルゲリータ邸を覗き見た。
光は灯っているから、誰かは居ると思うのだが、人の動く気配はあまりない。
しばらく覗いていると、ベルギウスの姿が窓越しに見えた。
なぜかティファニーの姿も見えた。
コルネリア王国にいるのだと思っていたが…
でも元気そうで、本当に何よりだ。
ティファニーはベルギウスととても楽しそうに話していた。
結婚できなかったのはとても残念だけど、ベルギウスとティファニーが結婚してくれたら、それは本望だ。
ベルギウスなら任せられる。
二人が結婚する姿を想像し、俺は心が苦しくなった。
でも、それは俺が選択した道なのだから、仕方ないんだと自分に言い聞かせ、マルゲリータ邸から離れようとした。
すると、側にフローマーが立っていた。
さすが猫だけに足音がなく、全く気がつかなかった。
「にゃー!」
「しー!フローマー!しー!俺はマルゲリータ邸に寄るつもりはないんだ。
このまま行かせてくれ。」
「にゃー!」
フローマーはひときわ大きく叫び、俺を抱えて歩き出した。
「ちょっ、ちょっ、下ろしてくれーーーーーー」
猫は猫だけれども、人間ほどの大きさともなると、力もすごく、かなり暴れたが、フローマーにはかなわなかった。
あっという間に、ベルギウスとティファニーの前に連れて行かれてしまった。
「ひ、久しぶり。ベルギウス、ティファニー。」
俺は勇気を出して、ティファニーを見た。
ティファニーは悲しそうな顔をして、そして、何も言わず、走って、客間の一つに入っていってしまった。
自分自身が本当に情けなかった。
「シルヴィオ様、こちらの世界にはもう来ないとの約束したじゃないですか。
私のように手遅れになる前に、どうか来るのをやめて下さい!」
「今日はすごい久しぶりにきたんだよ。
本当にちょっとだけ様子を見ようと思ってさ、そんなに怒るなよ。」
「はぁ、まったく。本当に次からはダメですからね。」
ベルギウスは少し怒ったように見えたが、すぐにいつものベルギウスに戻り、笑顔で言った。
「そうだ!せっかく来たのなら、隣町にあるアルゲンのダンジョンに行きましょう!」
ベルギウスは作りたい薬があり、アルゲンのダンジョンにある藻がどうしても必要との事だった。
出没するモンスターは強くないのだが、賢者だけでは近距離攻撃が苦手なので不安だとの事。
俺は、ベルギウスの頼みならばと、喜んでダンジョンに行くことにした。
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