第138話 07.スターとの恋

「あなたスターの素質あるわ。すごい。」


 沢口壮太くんに告白したらOKをもらった話をすると、沙也加さんはとても喜んでくれた。


「沢口壮太といえば、高校生ながらバスケの日本代表としてオリンピックにも出場したスーパースター。


 そんな沢口君が彼氏なんて、すごい話題性!」


 二人で出演した例のトーク番組がすごく好評で、お似合いのカップルだとネットニュースでは話題になってるみたい。


 そのおかげか、壮太君と一緒のテレビ出演依頼が増えた。


 壮太君に会える機会が増えるのは嬉しい。


 本番前に控室に来てくれて、お話してくれた。


「ねぇ、ナナちゃん、鋼の刃ってアニメ見てる?」


「あ、今すごい人気だよね。少しだけ見たよ。」


「少し?あれ、マジで面白いから、見ないと人間として9割損するから。」


「9割損するの?」


 人間は皆あのアニメ見てるんだ。人間らしくなるために、私もちゃんと見ないといけないな。


「今度、映画が公開されるんだ。僕、絶対見に行くから。一緒に見に行こうよ。」


「行く行く!すごく嬉しい!」


 こんな他愛もない話ができるのが、とても幸せだった。



 沙也加さんはとても良い人だったけど、私に衣食住を与えてくれたのは、仕事のためだって分かってる。


 仕事が無くなったら、マンションから追い出されるかもって、いや、そんな事する人では無いって信じてるけど…。


 正直、心の底には不安がある。


 だから、仕事は必死に頑張らないといけない。


 日本というこちらの世界に来て、生きていくのに必死だった。


 そんな中、壮太君だけは利害関係なく、ただ楽しくお話しできる…、そんな存在。


 仕事以外の単なる雑談が、こんなに癒されるなんて。


 

 壮太君は、漫画が好きみたいで、いろんな漫画の話をよくしてくれた。

 教えてくれた漫画はなるべく読んだ。


 なんでも共通点ができるのは、とても嬉しい。


 でも壮太君は、スーパースターである一方で、勝たないといけないプレッシャーがすごいみたいで、イライラしている時がある。


 そういう時は、少し冷たくて、嫌われたんじゃないかって不安になる。



●●●


 沙也加さんの事務所には、新人を迎え入れていた。


 15歳のKaoriという芸名の女の子だった。


 「ナナおねえちゃん、そのお洋服どこで買ったの?すっごい可愛い!」


 Kaoriちゃんは、おしゃれで、いろんな事に興味を示していて、とてもかわいかった。

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