第34話 白魔術と薬草〜行ってはいけない危険な森…〜

 次の日から、私は白魔術の講義とやらに出席した。


 顔立ちは少し違うけど、背格好が似ていて、洋服まで似ている女の人がいたから、すぐに第4王女ティアナである事はわかった。


「ティファニー!あなたと一緒に授業が受けられるなんて、嬉しいわ!」


 私を見るなり声をかけてくれた。



 ティアナは優しいお姉さんだった。


 子供の頃から仲良かった事がよくわかる。



 ティアナは頭も良い。


 やはり黒魔術もきちんと学んだためか、どんどん白魔術を覚える。



 一方、私は一つを覚えるのが精一杯だった。



 白魔術の呪文はとにかく長い。


 精霊たちに何をお願いしたいのかをきちんと理解し、本当に心を込めてお願いしないといけない。


 それも集中して。雑念は微塵もあってはいけない。


 もちろん、呪文は一文字でも間違ってはいけない。



『愛に満ちたるエルフ神よ、火、水、風、木、全ての精霊をここに集めん。

火の精霊よ、その炎の熱で、凍てつく者を温めん。

水の精霊よ、清らかな水にて、汚れた者を浄化せよ。

風の精霊よ、痛みの元となる素子を束縛し、吹き飛ばさん。

木の精霊よ、みなぎる木の生命を、怪我で苦しむ汝に分け与えたまえ。

我が祈り、コルネリアの輝きとなりて、苦しむ汝に加護を与え、救いたまえ。』


 私が問題を起こした水の魔法の呪文は、


『水の精霊よ、清らかな流水を激しく凍てさせ、汝に降り注がれん』


 だったから、白魔術の呪文はすんごい長い!!!



 それでも、怪我をしている人を偶然森で見つけ、学んだ白魔術をかけてあげたら、みるみる傷が治ってお礼を言われた。


 その時に、白魔術を学んで本当に良かったと思った。


 現実世界では、勉強も出来ず、スクールカーストの底辺にいた私が、困ってる人を助ける事が出来るなんて…、人の役に立てるなんて…。



 白魔術師は薬草についても学ばないといけなかった。


 魔力の強い白魔術師が作った薬草は、効能が高くよく効くため、他国から買いに来る人が大勢いた。


 植物は美しいだけでなく、それぞれに効能がある事を知り、私は感動し、すぐに薬草作りにのめり込んだ。



 現実世界でも学校に行っていたが、全く勉強に興味を持てなかった。


 この異世界で、好きな事を学ぶ楽しさを知った。



 勉強するのが楽しいと思えたのは、ティアナのおかげもあると思う。



 ティアナとは、二人でよく森へ出かけた。


 だいたいは薬草を探しに行くのだけど、美味しい木の実を見つけておやつに食べたり、先生の悪口を行ったり、とにかく楽しかった。


「ここから先は、エルフ神のご加護がない区域になるから、行ってはだめよ。とっても危険なのよ。」


「この森に危険な所があるの?」


 私はティアナと一緒なら何処へでも行けるような、そんな気がしていたから驚いた。


 安全なところだけ、案内してくれていたんだな。


「ええ。そうよ。この先はレオンハルト王国になるの。人間の住む国よ。


 国自体はとても良い国だけど、森はね、モンスターが出るから危ないの。


 むしろ、モンスターの出ないコルネリアの森が特別なのよ。」



 絶対にダメだからねとティアナに念を押されたが、ダメと言われれば気になってしまう。


 だって、遠くから見ても、明らかに植物の種類がコルネリアとは違うことが分かるから…。


 コルネリアにはない薬草があるに違いない、レオンハルトの森に興味を持たずにはいられない。

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