第35話 レオンハルト王国の森〜ついに二人が出会う?!その瞬間とは?!〜

 私はコルネリア王国の自分の部屋から見える景色が大好きだった。


 特に朝は、空気が澄んでいて、夜露が朝日に照らされてキラキラと光り、街全体が宝石のように輝いている。


 その中を大きな川が何本も流れていて、この川の音を聞いていると、現実世界で起きた全ての嫌な事も一緒に流してくれるような、そんな気になった。



 でも、最近はその川の水がかなり減ったように見える。


 川幅も水量もなんだか半分くらいになった。


 コルネリアは木々に覆われた国だから、水がなくなったら大問題のはずだけど…。



 でも、私は王女だから、生活に特に問題はないし、王様と大臣たちが「水が、水が!」って最近大騒ぎしている。


 王様たちがきっと解決するんだろうな。



 そんな王様たちの忙しさをよそに、私は隣の国のレオンハルト王国の森が気になっていた。


「ねぇ、ティアナ、私思うのだけど、コルネリアの植物は研究尽くされているのよね。


 だったら他国の森へ行って、いろんな植物を見たいな。


 レオンハルトの森はすごい近いし、行ってみたいのだけど…。」



「ティファニー、何度も言うけど、コルネリアの森はエルフ神のご加護があるから安全に歩けるのよ。


 レオンハルトの森は危険なのよ。


 そんな森に行くなんて、信じられないわ。


 薬草の研究熱心なのは分かるけど、絶対だめよ。」



 ティアナは猛反対。絶対に一緒に来てくれない。


 だったら私一人で行くしかない。



 いざとなったら白魔術の回復魔法があるから、きっと大丈夫でしょ!



 私は大回復の白魔術だけは完璧に覚えていて、自信があった。


 小回復でもなく、範囲回復でもなく、単体への大回復。


 大は小を兼ねるっていうでしょ。


 どんな状態でもとにかく大回復かけとけば、取り敢えずはOKでしょ。ふふっ。



 私は満月の夜、念のため護身用に剣を持って、ティアナにも内緒で、なんとかこっそり城を抜け出して、森へ向かった。



 夜の森は、昼に来るよりもずっと静かで、エルフ神のご加護があるとはいえ、不気味で怖い…。



 でも、朝になる前に帰らないと、エステルやティアナが大騒ぎするだうから、躊躇してなんかいられない。


 頑張って先に進もう。



「ここからがレオンハルト王国の森かぁ…。」



 危険だとはティアナが言っていたが、森に入ってもなんともない。


 何か罠があるわけでも、モンスターが襲って来るわけでもない。



「意外と大丈夫そう、よし、見た事がない草花を見つけて、採取してとっとと帰ろう。」


 大きな3つの満月が照らしているので、草花はよく見える。


 レオンハルトの森は、コルネリアの森より水が少ないためか、植物の種類がやっぱり違う。


 珍しい植物がたくさん!薬草袋にいっぱい詰めて持って帰ろう!



「グルルルルルルルル」


 何かが唸っているのが聞こえる。

 草陰に、二つの目が光っているのが見えた。


 大きい動物がいる、これがモンスターなの?


 やはりモンスターはいるんだ!

 本能的に、逃げないと危ないと感じた。


 私は走った。

 全力の限り走った。


 振り返ると、草陰からモンスターが出てきて、私の方に向かって走り始めていた。


 間違いなく、私を追いかけている!



 怖い! 



 せっかく集めた大事な薬草袋、手放すのは本当の惜しいけど、重くて走るのに邪魔…。


 すごいすごいもったいないけど…薬草袋を手放した。


 珍しい植物だけ取り出そうかとも思ったが、そんな余裕は全くない。



 もう一度振り返ると、モンスターは思いのほかずっと近くまで来ていた。


 大きな熊型のモンスターだった。


 モンスターは手で私の足をはらった。



 すごい力で、私のからだは数メートル先に吹っ飛ばされた。


 い、痛い!


 体全身が痛い!


 でも立ち上がって、逃げなければ!走らなければ!


 立ち上がると、足に激痛が…っ!


 このままでは走れない。回復魔法を唱えないと!


 モンスターは距離を縮めてきている。


 あぁ、どうして一番詠唱時間の長い大回復の白魔術しか覚えなかったのだろう。


 必要ないと思っていたけど、こういう時にこそ詠唱時間の短い小回復の白魔術って必要なのね!


 ふと見上げると、モンスターは予想よりもずっと近づいてきていて、大回復の白魔術を詠唱している時間はない。


 逃げなきゃ…。


 足をひきづって歩いたが、モンスターにすぐに追いつかれ、また手で殴られた!


 熊の手にはするどい爪がついていて、その爪で背中の肉がすこしえぐれてしまった!


 痛さのあまり、意識が朦朧とする。



 あぁ、もうダメだ…

 


 私はその時、痛さのあまり、その場に倒れてしまった。


 うっすらと、人間らしき人が駆け寄ってきたのだけは分かった。

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