第20話 お香
異世界での男女のお付き合いって言う事が、どういう事かはわからない。
でもティファニーは理解してくれたようだった。
俺がかなり元気になったので、ティファニーは一旦、コルネリア王国に帰るとのことだった。
ビーバーを退治した後、ティファニーは報告のためにすぐに帰るべきだったのだが、俺のことを心配して、残ってくれたのだった。
「第5王女だから、私はかなり自由なの。」
とかなんとかいって、去っていった。
すぐ帰ってくるとも約束して。
俺は、去っていくティファニーの後ろ姿をずっと眺めていた。
今去ったばかりなのに、早く会いたいと思った。
ティファニーに会うためにはこの異世界に来なくてはならないが、お香が少なくなって来た。
お香はどうやって手に入れるのだろうか。
俺よりもずっと長くこの世界にいるベルギウス先輩に聞いてみよう。
「お香がなくなって来た?!」
ベルギウスはひどく驚いた様子で続けた。
「後何本くらいですか?」
「んー20本はないと思うけど。」
「そんなに減っていたのですか?!」
ベルギウスはしばらく黙った後、意を決したかのように話し出した。
「僕はこの世界でシルヴィオ様にお会いできて、楽しくて、仕方なかったんです。
だから、どうしても、言い出せない事があって…。
でも、マルゲリータ様のことも落ち着かれたことですし、そろそろ潮時なのかもしれません。
どうか怒らずに聞いてください。
あのお香は、まだマルゲリータ様も解明していない黒魔術の一種なんです。
簡単に言うと、呪いのようなものなんです。
僕はマルゲリータ様の忠告を破って、お香を使いすぎたため、もう現実世界に戻れなくなってしまったのです。
僕は時々、目が覚めて現実世界に戻るのですが、病院のベッドにいて、おそらく寝たきりの状態だと思われます。
現実世界で目が覚めているのは、1秒くらいでしょうか。すぐにこちらに引き戻されてしまうのです。
残りが20本程度ということは、これ以上はシルヴィオ様も危ないかもしれません。
もうこちらの世界には来ない方が良いと思います。」
現実世界に俺の居場所はなかった。
だから戻れなくても良い。
異世界には恋人のティファニーがいて、大親友のベルギウスとフローマーがいる。
二度と異世界に来ないなんて…絶対にありえない。
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