第131話 44.出発の日

 人を大事にするって難しい。



 ティアナの事は愛しているが、僕とは一緒にいない方が、幸せになれると思う。


 ナナちゃんの事も大好きだけど、やっぱりも僕と一緒にいない方が、幸せになれると思った。



 大事にしたいからこそ、別れを決意した。


 人を大事にするって、とても辛い。


 僕には、人を幸せにするなんて、まだ早いのかもしれない。



「おはよう!フローマー!今日もモフモフさせてくれよ。」


 フローマーは忙しいのか、少し嫌がったそぶりを見せたが、いつも通り抱きしめさせてくれた。


「フローマー。もう僕には君しかいない。

 ずっと僕の側にいてくれよ。」


 なんかちょっと涙がでてしまった。


 フローマーなら、こんな姿だって見せられる。



 新解呪の薬のおかげで体調にも問題なさそうだし、そろそろヴァルプルギス村に行かなければならないな。


 解呪の薬は、あくまで対処療法だ。


 この呪いの根源を解決しなければ、呪われて異世界に来る人は後を絶たない。



 呪いの魔術者の裏に書いてあった謎の言葉、ヴァルプルギス。


 そしてマルゲリータが持っていた杖に書かれていた人物の名前、マリアンネ・ヴァルプルギス。



 ヴァルプルギスとは村の名前である事が分かった。


 ヴァルプルギス村に行かなくては!


 ヴァルプルギス村はの周りは闇属性の強いモンスターが出現する。


 一人行くには難しいので、近距離の物理攻撃を得意とする相棒が必要だ。


 フローマーは、ずばり近距離の物理攻撃を得意としていたが、危険な場所に連れて行きたくなかった。


 フローマーは猫だけど、僕にとってはとても大事な存在だ。


 レオンハルト王国の掲示板でパーティ募集を募ったところ、シベリアンハスキー型の人獣ドミニクが応募してきた。


 以前、僕がコカトリスの毒でやられた時に助けてくれた人(犬)だった。


 フローマーと違って言葉も話せるし薬草の知識も少しあるようだし心強い。


 あと、見た目からして強そうだし。


◆◆◆


 出発の日。

 

 ヴァルプルギス村までは、徒歩で1か月くらいはかかると思われる。

 

「ベルギウス。準備はできたか。」


 ドミニクがマルゲリータ邸にやってきた。


 落ち着いた太い声と、青い目がすごくかっこいい。


「今回のパーティは俺とお前の二人と聞いていたが、フローマーさんは連れて行かないのか?」


「あぁ、フローマーは連れていく予定はないが。」


「ニャー!」


「フローマー!行く気満々だったのか?


 君はここマルゲリータ邸に残って、ここを守っててくれよ。」


「ンニャー!」


 珍しく言う事を聞かず、強気なフローマーに僕は少し驚く。


「ベルギウス、猫属は闇属性に強い種族だ。


 それに、フローマーさんが持っているロングソードは光属性だ。


 闇属性のモンスター専用の武器じゃないか。」



 フローマーのロングソード?


 フローマーはロングソードを常に2本装備していた。


 1本は僕がプレゼントしたもので、通常の戦闘に用いていた。


 もう1本は使ったところを見たことが無かったのだかが、ドミニクによると光属性の武器との事。


 光属性なんて、聞いたことないな。

 なんて珍しいんだ。


 この辺に闇属性のモンスターは出ないから使わなかったのか。


 そういえば、フローマーは話が出来ないことを良いことに、僕は彼女の事を何も知らないことに気が付いた。


 ただの猫だと思っていた。


 闇属性に強いようだし、本人も行きたがっているようだし、連れていくか。



 今度こそ、ヴァルプルギス村に行くぞ!


 さぁ、冒険に出発だ!


————————————

4章完結です。


楽しんでいただけたでしょうか。


次回からは5章フローマーが始まります。


実は5章の2話になると、PVが結構減ります。


ベルギウスを気に入っていただいたのに、5章1話はナターシャ・ヴァルプルギスという若い女の子の1人称だからなのかなと推測しています。


でも、少し経つとベルギウスはたっくさん出てきます。

フローマー視点でのベルギウスを、どうぞお楽しみください。


また、タイトルがフローマーなので、このナターシャちゃんがフローマーの正体なのか?

実は、ナターシャちゃんの正体は今まで時々登場していたあの人です。


是非、5章も楽しんでいただけたら嬉しいです♪

作者の私としては、この5章が一番お気に入りなのです♪


伴瀬リカコ

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