第175話 11.追撃
夜中にゲールノートが帰ってきた。
「マルゲさん、今夜ディートは城を抜け出せそうにありませんでした。
でも、話はできました。
レオンハルトの森の中に、ディート専用の小さい家があります。
そこを自由に使ってよいとの事です。
明日、夜があけたら僕が案内しますね。」
「そこで、私はこの子と暮らすの?」
「ディートは君さえよければ、そこに暮らしてよいと言っていましたよ。
ディートも時々城を抜け出して通える距離だし…。」
ゲールノートは、ポケットから手紙を取り出した。
「ディートからの手紙です。」
その時、夜中なのに誰かがゲールノート邸を訪ねてきた。
ドアをノックする音が聞こえた。
「こんな夜遅くに。いったい誰でしょう。」
ゲールノートがドアをあけると、雷の呪文独特の閃光が走り、ゲールノートは壁に貼り付けにされた。
な!なんて事!
「あなたがマルゲね。
これからディートと私がレオンハルト王国を発展させていくのに邪魔な存在!
混血の子供など生かしてはおけぬ!」
ノーラ姫だ!情報が漏れたんだ!
表情を見ると、冗談とは思えない形相をしていて、後ろに数人の従者が見える。
こ、殺される?!
ノーラ姫の杖が紫色に輝き恐ろしい魔力を放っている。
なんだあの杖は!!!
紫色に光っているという事は、闇属性の杖か!
闇属性の魔術は、どんなに魔法耐性があっても大ダメージを与える事ができる強力な属性だった。
ただし、消費魔力が大きすぎるため、使える者はエルフの極わずかな者だけと、教わったのだが、人間で闇属性の杖を操れるものがいるなんて!
闇属性に唯一大ダメージを与えられるのは、光属性魔法のみだが、光属性の攻撃魔法は覚えていなかった……。
私にノーラ王妃は倒せない!
近距離で炎獣イフリートに遭遇したかのような恐怖が全身をかけめぐる!
に、逃げなきゃ…!
ノーラ姫と反対側のドアに向かって、慌てて走った!
鍵が掛かってない!良かった!森の中に向かって全速力で走る!
ノーラ姫は火の呪文を唱え始めた。
巨大な火の精霊追いかけてきて、ドアを焼き尽くした。
森の中を全速力で走った!
「マルゲを逃がすな!追え!」
ノーラ姫が何人かに向けて命令していた。
私をめがけて飛んでくるのは、火の精霊や水の精霊…。
金縛りの術をかけるものは誰もいないっていう事は、目的は私の確保ではなく、殺すという事…。
このままじゃ殺られる!
「火の精霊よ、大地に眠るマグマの灼熱をここに集め…。」
私は攻撃力の強い火の呪文を唱えようと思って止めた。
もし、私がレオンハルトの人を殺したとなれば、それを理由に指名手配されるだろう。
「天より神の裁きを、雷気を汝の体に帯電させ、全ての感覚を麻痺させよ。」
攻撃呪文より、詠唱文が少し長いから不利なんだけど、私は金縛りの術を追手に掛けた。
走りながら、金縛りの術!
走りながら、金縛りの術!
走りながら、金縛りの術!
はぁ、はぁ、はぁ、何回金縛りの術を唱えたがわからない…。
でも、追手の気配がなくなった…。
たぶん、私の金縛りの術で、その辺の木にしばりつけられてると思う。
放っておいても時間がたてば、術がとけて動けるようになるはず。
追手の気配は亡くなったけど、まだノーラ姫をやってない…。
すると静かな森の中から、山のような巨大なサイズの魔力の塊が現れたかと思うと、真っ青に光った。
水属性のリヴァイアサンが召喚された!
巨大な竜の体は青い氷で包まれ、かなり遠くにいるのに、その冷気を感じる!
ノーラ姫が召喚したに違いない…。
人間なのにこんな巨大なリヴァイアサンを召喚できるほどの魔力をもっているなんて、なんて恐ろしい…。
体からから発せられる青い光で、周りの森は照らされて、リヴァイアサンから私は良く見えるに違いない。
目が、目があった気がする…。
こ、殺されるっ!
なんとか逃げなきゃ!
なんとかコルネリアの土地に入るんだ!
さすがに他国の土地で勝手に戦闘はできないはず…。
そこまで、なんとか、なんとか逃げ切らなきゃ!!
目の前に、ちょうどよいサイズの木の板がころがっている。
風の魔術は、魔力の消費量が多いからあまり使いたくないのだけど…
「風の精霊よ。疾風の力ここに集め、しばし我に貸し与えよ。」
木の板に風の魔術をかけると浮き始めた。
木の板に飛び乗ると、疾風のごとく板が飛び始めた。
走るより、ずっと速い!
リヴァイアサンに見つからないように、木の上ではなく、幹の間を縫うかのように飛ぶ!
リヴァイアサンが口から水の塊を吐き出した!
地面に触れると、周りにある木々を凍らせている!
体がかすりでもしたら、凍って死んでしまう!
時々近くにその塊が私の近くに落下し、爆風で煽られる!
魔力が切れる前に、コルネリア王国の土地に!
お願い!コルネリアまで持って!私の魔力!!!!!
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