第174話 10.体調不良

 王宮学校を卒業した後、私はコルネリア国防大臣の元で働くことになった。


 しっかり現職の大臣から仕事を教わり、いつかはアクセルの役に立てるように、頑張らないといけない。


 勉強しないといけない法律、下っ端としてやらなければならない雑務、いくら時間があっても足りない。


 忙しいけど、でも、やりがいのある仕事をできるって幸せ。



 ディートの結婚式から3か月、忙し過ぎるのかな、少し体調がおかしい。


 これくらいの忙しさ、今までも何回かあったけど、何ともなかったはずなのに…。


 

 そんな無理したつもりはないのだけど、とうとう倒れてしまって、医務局に運ばれてしまった。


 

「先生、すみません、貧血かと思うですが…。」


「貧血?ではないと思うな。少し調べさせてもらうよ。」


 先生は、脈を図ったり、尿検査の結果を確認したりして戻ってきた。


「えっと、妊娠されていると思います。」


 そ、そんな、まさか…。


 そういえば月の物が最近なかったような…。



 どうしよう…


 とりあえず、ディートには知らせた方が良いのではないかな。


 でも、ディートは王子だから、簡単に会える存在じゃない…。



 そうだ!ゲールノートなら…。


 ゲールノートの家なら、レオンハルトの外れだし、行きやすい。


◆◆◆


 次の日、仕事はたまたま休みの日だったし、朝起きてすぐにレオンハルトにあるゲールノートの家に向かった。


 ゲールノートはレオンハルト王国では、かなりなお金持ちみたいで、豪邸に住んでいた。


 この前来たときは、ここに住んでいるようだったけど、人の気配がしない…。



 困って玄関の前をうろうろしていると、人が出てきた。


「何か御用でしょうか。」


「あの、私、レオンハルト王国の王宮学校でゲールノートさんの同級生だったマルゲという物です。


 ゲールノートさんはいらっしゃいますでしょうか。」


「このお屋敷には誰も住んでいないのですよ。


 時々、お客様がいらっしゃったときに使うくらいで。


 ちょうど母屋のほうに行くところですので、家の中で待っていてください。


 ゲールノート様にお声がけしてまいります。」



 このお屋敷が母屋じゃないのか?!


 ゲールノートのお父様はレオンハルトの経済大臣って言ってたかな…。


 すごいお金持ちなんだな…。



 1時間くらい待っただろうか、ゲールノートがやってきた。


「マルゲさん。いったいどうしたのですか。連絡もなしに。」


「実はどうしたらよいか分からなくて、とても困っているんだ。


 誰にも相談できなくて、あんたしかいないと思って…。」


「ディートの事かい?」


「そうなの、実は、私、ディートの子供がおなかに中にいるんだ。」


「な、なんだって?!


 人間とエルフの混血は時々いるけど、王族となれば大問題だよ…。」


「わ、私どうしたら良いのか…」


「ぼ、僕にもわからないよ。


 なんとかディートに連絡してみようと思う。


 この屋敷は僕の物だから、誰も来ないし安全だよ。


 今日中に戻れるかわからないけど、明日には必ず戻ってくる。


 ここで待てるかい?」


「ありがとう!ゲールノート!」



★★★


 ベルギウスは混乱していた。


 ”人間とエルフの混血”という文章があるけど、ディートリッヒ3世は間違いなく人間、ではマルゲリータはも人間のはずだ…


 かみ合わない。


 これは本当にマルゲリータの日記なのか?


 僕はいったい誰の日記を読んでいるんだ?!

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