第117話 30.エルフ神アデライード
冷たい空気…
不思議な凛とした感じ…
声を発してはいけないような静けさ…
ここは神聖な場所なのではないか?
ティアナに言われて入ったドアの向こうは、今まで見たことのないような場所だった。
部屋の中心には、巨木の中心のような部分があり、その周辺には、雨水が木の葉や枝で濾過され、下垂れ落ちていた。
おそらく天井は無く、月光が、天井代わりになっている木の葉の間をすり抜け、水にキラキラと反射していた。
そして木の中心をよく見ると、そこに女神の像が木と溶け合うように存在していた。
ここは、おそらく最上階だろう。
ここへ来る方法は、さっきの道を通るしかなさそうだ。
城の中には王族しか知らない秘密の部屋があるというが、ここがそうなのでは無いだろうか。
部屋というよりかは、蔦で自然にできた空間のようだった。
そこに人が立って歩けるように、床や柱を追加して補強しているような部屋だった。
「もう普通に話していいわ。
さっきの壁の穴とか、木の中を通った事とか、ここの事は誰にも言ったらだめよ。
王族だけの秘密なんだから。
アハ!ドキドキしちゃった。」
そう言いながら、ティアナは女神像の方へ向かって歩く。
エルフではない人間の僕が、これ以上前に進んではいけないような気がして、前に足をだす勇気がでない…。
「前にもね、何回かここにきたことがあるのだけど、一人で到着できなかった気がするの。
その時、誰かと一緒だったような気がするのだけど、どうしても思い出せなくて、もしかしたら、ティファニーだったのかもしれないわね。
思い出せないなって、とても寂しいことだわ。
あなたにさっき助けてもらうまで、壁に這いつくばりながら、誰かと一緒だったら、ここに到着できるかもしれないって思っていたの。
そしたら偶然あなたが現れて、とってもびっくりしたんだから。」
キラキラ輝く水の上を歩くティアナは本当に妖精のようだった。
その姿を見て、僕は自分がバカバカしくなった。
あぁ、僕はこの人が好きなんだ。
この気持ちを我慢するなんて、もう無理だと、自分自身の気持ちを抑え込む事がバカバカしくなった。
好きになってはいけないと、我慢しようと今まで頑張ったけど、もう無理なんだ。
引き返せない。
僕はティアナが好きだ。
僕が王族でも無い一般賢者だからとか、同じ種族じゃ無いからとか、なんかそういうの関係ない。
僕はティアナが好きだ。
僕が歩を進めていないのを見ると、ティアナは手招きした。
進んで良いのだろうか。
困っていると、ティアナが戻ってきて、僕の手を引いて、女神像の方へ歩いていく。
「これがエルフ神アデライード様なの。
意外と小さいでしょ?私たちエルフの女神様なの。
お父様からあなたがヴァルプルギス村に行くと聞いて、聖水を取りに行くように言われたのよ。
あの周辺は闇属性の強力なモンスターが出るの。
中でも厄介なデス魔法をかけて来るのがいて、デス魔法に当たると30%の確率で死んでしまうの。
すぐにこの聖水を飲めば生き返ることができるわ。
この女神様の脇から出る水が、コルネリア王国で一番強力な聖水なのよ。」
ティアナは持ってきた瓶で聖水をくみ、僕に差し出した。
僕は瓶ではなく、ティアナの手首を掴んだ。
そして、アデライード像をまとっている巨木にティアナを押し付けた。
「ティアナ。僕たち、最後にしようっていうあの時言ったじゃないか。
もう僕を弄ばないでくれ。」
「そ、そんなつもりじゃ…。」
「こんな人気のない所に連れてきて、僕だって男なんだよ。いいの?」
ティアナは何かを言おうとしていたが、僕はもう許さなかった。
ティアナの細い腰をぐっと引き寄せ、唇を重ねた。
そしてそのまま聖水がしたたり輝く床の上にティアナを押し倒した。
ティアナの洋服の中に手を入れて豊かな胸を触る。
「あぁ!」
ティアナが声を出したからびっくりして、僕は顔を見た。
嫌がっている感じはしない。
でも、僕はそこで正気に返ったとうか、その先に進むのをやめた。
ティアナの上半身を起こして、もう一度、激しくキスをした。
「私はいいのよ。ベルギウス。」
「ダメだよ。僕は君のことが好きだけど、この先はまだできない。」
僕はティアナとアデライード像の木に寄りかかって座った。
かなり洋服が濡れてしまったけど、不思議と寒くなかった。
月の光をキラキラ反射する水を見ながら、僕はティアナに話した。
「今日、中庭でエンリコと遊ぶ君を見たよ。
それからずっと、君のことを考えていた。
そしたら、窓の外に君がいたから、僕の驚き恐怖心とと言ったら、もう表現できないくらいだよ。」
「あはは。ごめんってば。」
「僕は王族じゃなくて、エルフでもないから、君のことを好きになるのを諦めようと思っていたんだ。
でも、好きな気持ちを抑えるのって無理だなって思ったよ。
将来は結ばれないって分かってるけど、今は、君のことを好きでいさせてほしい。」
「ベルギウス、私も好きよ。
たぶん、私はあなたよりずっと前から好きだった。」
「国も違うしあまり会える機会は無いけど、二人で会える時間をなんとか作って行こう。」
僕はティアナを抱きしめてまたキスをした。
ティアナの洋服が水に濡れて、ピンク色のブラジャーがうっすらと透けている。
「…………やっぱりおっぱい触ってもいい?」
「え、えぇ?!」
「あはは。やっぱりためらうんだな。冗談だよ。」
くぅ。男としてはこの二人きりの空間で、水に濡れて下着スケスケの美女一緒にいて何もできないのは、ちょっとした拷問だぜ。
でも、ティアナと一緒にいられる時間はたぶん滅多に無いので、なるべくスケスケ下着を見ないようにして、いろんな会話をしたり、そして何度も見つめあってはキスをしたり、幸せな時間を過ごした。
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