第10話 再会と直感


 テーグリヒスベック城での打ち合わせが終わった後、俺は迷わずティファニーを追いかけた。


「ティファニー!」


「お久しぶりです。シルヴィオ様。


 またこうしてお会いできるなんて、とても嬉しいです。」


「王女様なんでしょ?敬語はやめてくれよ。」


「えっと、じゃ、気兼ねなくしゃべっちゃおうかな。ふふっ。」


 今日はエルフの正装なのだろう、白いベールを頭からすっぽりかぶっていて、それが赤い髪と目を引立てる。


「ま、王女なんだけどね、第5王女でしょ?


 白魔術が得意なこともあって、こうしてパーティに組み込まれちゃうの。


 それに白魔術だから後方支援だし、怪我する事もあまりないしね。


 それに何よりも、水の問題はレオンハルトより、私の国コルネリアの方が大問題なのよ。


 だから、お父様が参戦するようにって事なの。」



 俺は会話が途切れそうになったのが怖くなって、急に切り出した。


「もしよかったら、今日の夜、ご飯でも一緒にどう?」


 あぁ、俺ってなんでこう会話下手なんだ。


 いきなり食事に誘うなんて!

 もう少し話が盛り上がってからとかだろ、普通!


「まぁ、シルヴィオ。誘ってくれてすごい嬉しいわ。


 でも、モンスター退治に向けて明後日出発でしょ?


 準備がいろいろあるの。ごめんなさい。


 でも、道中は長いから、たくさんお話ししましょう。」


 あぁ、体よく断られてしまった。風祭のようにはうまくいかない。


 体力や敏捷のステータスはかなり高くなったのに、魅力と雑談のスキルはどうやら全く上がっていないようだ。


「やぁ、ティファニー!」


 そこにベルギウスがやってきた。


「ティファニーって王女様だったんですね。」


「うふっ。そんな話を今、シルヴィオとしていたところよ。」


「白魔術が得意なんですね。僕と同じ後方支援型なんですね。」


「後方支援同士、頼りにしてるわ。ベルギウス。」


 なんとなくだけど、ベルギウスもティファニーに好意を抱いているんだと思った。


 いや、ティファニーに興味を持たない男はいないと思う。


「それよりもお母様の安否がとても心配よ。シルヴィオ。」


「あぁ。そうなんだ。」


「でも、マルゲリータ様は大賢者。きっと大丈夫。


 とにかく、私たちが今できることを頑張りましょう。」


 その時突然、強風が吹いて、ティファニーが着ているベールが強くなびき、そのせいで、ティファニーの髪飾りが風に持っていかれてしまった。


 俺はジャンプして髪飾りををキャッチした。


 風が弱まり、髪飾りをティファニーに返した。


「ありがとう。シルヴィオ。」


 風になびく赤い髪。

 真紅の瞳。

 艶やかな口びる。

 優しい微笑み。


 なぜか分からないが、その時俺は直感した。


 きっと俺はティファニーと結婚する。

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