第27話 キス


 俺は走った。全速力で走った。


 俺はなんてバカなんだ。バカだバカだバカだ!


 自分の馬鹿さ加減にうんざりする!


 ティファニーが現実世界の人間だった。



 俺はいつも感じていた。


 ティファニーを見れば小鳥遊たかなしさんを、小鳥遊さんを見ればティファニーを!


 顔は違うけど、喋り方や仕草、なんとなく似ていると思っていた。



 どうして、小鳥遊さんの携帯についていたストラップを見た時に気がつかなかったんだ!


 あれは俺があげたネックレスそのものだったんだ!


 俺はマルゲリータ邸に向けて、体力の続く限り、とにかく走った。




 マルゲリータ邸につくと、門のそばにティファニーが立っていて、俺たちを待っていた。


「シルヴィオ、さっきはごめんなさい。急に現れたから、私動揺しちゃって…。」


 俺はティファニーを強く抱きしめた。


「シルビィオ、い、痛いよ。」


「ティファニー、ごめん。俺、君のことを置いて行ったりして。


 俺は君の事が好きだ。」


「ど、どうしたのシルヴィオ、急に。」


「現実世界で元気に暮らしていけるように薬を飲むんだ。」


「えっと、わ、私、現実世界になんて戻りたくないの。


 ここ異世界で暮らしたい。優しいお父様とお母様がいて、あなたやベルギウスもいる、この世界で暮らしたい。」


「ここは俺たちの世界じゃない。


 わかっているだろう?ティファニー!いや、小鳥遊さんっ!!


 一緒に現実世界に戻ろう。俺たち現実世界で結婚しよう!」


「わ、私の事、気がついてたの?」


「君は俺が鈴木だって最初から分かっていたはずだ。


 俺は外見は変わってないからな。


 君はエルフだったから小鳥遊さんだって気がつくのに、すごく時間がかかったよ。」


「ティファニーじゃなくて、現実世界の小鳥遊でも結婚してくれるの?」


 そう言って、ティファニーは真っ赤な大粒の涙を流した。


「ティファニーも小鳥遊さんも君じゃないか!俺は君と結婚したいんだ!」


 俺はティファニーの両頬に手を当てて、生まれて初めてのキスをした。

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