第83話25.彼女を絶対守る 〜お香に呪われ過ぎる前に、ティファニーを絶対守る!〜


「びっくりしたよ。ティファニーも現実世界から来ているとは思わなかったよ。


 どうりで気があう訳だね。」


「もしかして、この異世界にいる人はみんな現実世界から来ているの?」


「いや、それはないよ。


 マルゲリータ様は現実世界からこちらの世界に飛ばされて来た人たちをここに連れてきて、助けていたんだ。」


「そうだったのね…。」


「お香はどれくらい残っているの?」


「実はもうほとんどないの。あと3本くらい。」


「3本?!随分使ったね。体調は大丈夫?」


「最近は、現実世界にいたくなくて、ずっとお香を焚いていたの。


 そのせいか、現実世界に戻るとだるくて。


 最近はお香が無くても、目をつぶるとこっちに来れていると思う。」


 僕は人生の中で一番驚いた瞬間だった。


 現実世界で、プロバスケットチームからスカウトが来た時よりも、自分が歩けなくなったと知った時よりも驚いた。


 こんなに大切に思ってきたティファニーが命の危険にさらされていた。


 アガサのように消えていなくなってしまう。


「ティファニー!それは危険な状態だよ!


 現実世界でちゃんと起きて食事をして生きていかないと死んでしまう!


 死んだら、こちらでも死ぬんだ!」


「私、もういいの。ずっとこっちの世界に居たいの。」


「だめだ。ティファニー!次に目が覚めたら、ちゃんと生きるんだ!


 現実世界で生きるんだ!」


「大丈夫、心配しないで、ベルギウス。」


「いや、だめだよ。僕は君のことを死なせない。


 あのお香は呪いなんだ!


 君はお香に呪われすぎてしまった!


 君のために解呪の薬を作るよ。


 それを現実世界に戻った時に、ちゃんと飲むんだ!」


 姿が消え始めてからでは手遅れになる。


 幸い、ティファニーは触れることもできたし、姿もまだはっきり見えていた。


 今、解呪の薬を飲めば絶対間に合うはずだ。


 それを飲めば、僕は二度とティファニーに会えなくなる。


 今までずっとどうやったらティファニーの側にいれるかだけを考えて来たのに、この解呪の薬を飲ませたら最後、僕は二度とティファニーに会えなくなる。


 でも、現実世界で死ねば、異世界でだって死ぬ。


 僕は少なくとも、ティファニーに現実世界で生きていて欲しいと思った。


 死ぬのは僕だけで十分だ。


 僕はティファニーを絶対守る。



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