第91話 04.現実世界へ…?!
朝がやってきた。
重厚で黒光りしている木製の床、大きな窓から差し込む太陽の光、ほんのり香るニスの香り…。
僕にとっては見慣れた光景。
そう、ここはは異世界にあるマルゲリータ邸の客室だ……。しかも僕が愛用していた客室だ……。
…………っなぜ!!!!!!
今まで寝て起きたら現実世界へ戻っていたのに!
もしかして、現実世界へ帰れない?
あはは!そんなバカなね。もう一晩寝れば大丈夫かな。
僕は、その日もフローマーと楽しく過ごした。
街に出かけて市場をぶらぶら歩いて、食材を買い、昨日と同じでフローマーと一緒に夕飯を作って、仲良く食べた。
次の日の朝。
…………っなぜ!!!!!!
その次の日の朝も…。
…………っなぜ!!!!!!
…………っマジか!!!!!!
…………っどうして!!!!!!
…………また異世界か!!!!!!
…………僕は現実世界に戻れなくなってしまった。
心を入れ替えて生きていこうと思ったのに、これだ。
心を入れ替えたらいけないって事ですかね。マジでグレますよ。
目覚めとともに不機嫌な僕をよそに、フローマーが部屋に入って来てニャーニャー言ってきた。
「あ!もしかして、僕、テーグリヒスベック城に行く日?!」
やばい!僕は今日から城で働く事になっていたのだ!グレてる場合じゃない!
僕はマルゲリータの息子であるシルヴィオと、コルネリア王国の第5王女ティファニーと共に、巨大なビーバーモンスターを倒し、その功績が認められて城で働く事になっていた。
大出世だ!
王様から直々にスカウトがあった時、僕は異世界で一生をくらすつもりだったから、迷わず引き受けのだ。
遅刻するわけにはいかない!!!!!
僕は慌てて身支度をして城へ向かった。
◆◆◆
マルゲリータ邸は、レオンハルト王国という国の外れにあった。
あのおばちゃんは薬草の研究もしていたので、薬草が沢山ある森のそばの家を選んだのだろう。
レオンハルト王国の城はテーグリヒスベック城だ。
中央にある大きな建物と、その周りにあるいくつかの塔は、全て白い壁で覆われていて、群青色の青い屋根とのコントラストがかっこいい。
あの建物に毎日通えると思うと嬉しい気分になるが、現実世界に帰りたい気持ちも大きいので、複雑な気分だ。
現実世界への帰り方が分からなくなった今、王様からの呼び出しを無視するわけにはいかない。
僕は早足でテーグリヒスベック城へ向かった。
城へ行くには城下町を抜けなければならない。
街並みは中世のヨーロッパという感じなのだろうか。
道路は石畳で凸凹が激しい。現実世界で車椅子で生活している僕から見ると、恐ろしい道だ。
ここを車椅子で移動することを想像するだけで腕が痛くなる。アスファルトの偉大さを感じずにはいられない。
街中の建物は3階建てが多いかな。
ハーフティンバー様式だっけ?柱がむき出しで、その間に石とか粘土とか、そういうのを詰めて作る建物だ。
一階は多くが店になっていて、今の時間帯は朝ごはんを食べる客で賑わっている。
今日は天気が良いので、店の外に雑然とテーブルが並び、そこでパンをほうばる人々が大勢いる。
彼らが飲んでいるのはコーヒーなのか、香ばしい匂いが漂ってきて、お腹がすいてきた。
でも、今、ご飯を食べている時間はない。
僕は走り出した。テーグリヒスベック城まではもう少しだ。
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