第32話 王女ティファニー〜異世界へトリップしたらエルフの王女になってました〜


「王女様、王女様、ティファニー様!」


 今、やっと寝付けたところなのに、誰かに揺さぶられて、目がさめる。


「今日は、大事な魔術の講義がある日ですよ。そろそろ起きてください!」



 いったい何を言っているかわからない。


 あれ、私、一人で暮らしているはずなのに、この人はいったい誰だろう。


 その人は、強引に私を洗面台の前に連れて行き、顔を洗うように言った。


 私は洗面台にある鏡をみてびっくりした。


「目が、目が、赤い!髪の毛も!!!!」


「何を寝ぼけているんですか、ティファニー様。早くご支度をしてください!」


 そういう女の人も、目と髪が赤い。



 もう一度、よく鏡を見てみると、白人のように肌が白く、鼻もすっとしていて、すごい美人…。


 恐る恐る頬に触れてみる。

 鏡の中の美人も、私の動きと全く同じ動きをした。


 間違いない!この美人は私だ!


 見慣れた丸顔とは全く違う!


 顔だけじゃない。


 背も高くなっているし、手足だって長いし、胸だって、大きくなってる!


 さらによく見れば、耳が尖っているし、たぶん、私、人間じゃなくてエルフになってる!!!


 これは夢?

 もしかして、今はやりの転生?


 まぁ、どっちでもいいや。

 とにかく、ここでの私は美人なんだから!


 よく見れば、部屋も私の部屋と全く違っていた。


 全て木で作られている壁、床は緑の絨毯かと思ったが、柔らかい藻が生えているようだった。


 窓の外を見てさらに驚いた。



 植物の緑で覆われた街並みが見える。


 ところどころ木が生えていて、そこから光があふれ漏れ、人が住んでいる事がわかる。


 豊富な水が流れる川が何本もあり、その川の周辺で赤い髪の毛をした人々が集まって働いているようだった。


 それが地平線までずっと続いていた。



 私のいる建物は大きな城の一角だった。


 巨大な2本の木の間に巨大な塔が立っていて、おそらくあれが城の中心なんだと分かった。


 うわぁ、大きな国…


 何もかもが美しい。

 自然の中に人が住んでいる。


 すごいキレイ…


 ゆっくり景色を眺めていたかったけれど、私を叩き起こしたその女の人はとても忙しそう。



「いつも寝坊していったいいつになったら…」


「今日の洋服はどれに…」


「このエステル、王女様に支えて20年…」


 とかいろいろ独り言?、小言?を言っていて、とりあえず分かったのは、私はティファニーという名前の第5王女で、この人は私の面倒を見る係で、名前はエステルという事だった。



 エステルはとても素敵な洋服を持ってきてくれた。


 真っ白で、ふわふわ風になびくようなシルク素材。


 裾には赤と金で刺繍がしてある。


 こんなステキな服を着れるなんて、夢のよう。


 夢でも転生でもいい。

 今の私は、美人な王女様なんだから楽しまなくちゃ!

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