第6話 職業選択

 ティファニーにメロメロになってしまい、情けない事に、自分がなんの目的でここにいるのかをすっかり忘れていた。


 そうだ。俺は母さんを探していたのだった。


 もう一度詳しくベルギウスに話を聞くと、母はマルゲリータという名前で、強力なモンスターが出没した時は魔術で戦い、隣国との戦争時には王様の参謀として国を救って来た大賢者なのだという。


 現実世界での母は、ご飯を作っては食べて、テレビドラマを見て、ちょろっと掃除して寝る、そんなイメージしかない。


 モンスターと戦う?戦争の参謀?



 嘘だろ。



 最近は王様に召集され、山の向こうのモンスターを退治に行っているらしい。


 普通はそろそろ帰ってくる頃らしいのだが、少し手こずっているようで、まだ帰って来ていないとの事。



 山の向こうに行くことはできない。

 昨晩の熊のモンスターだけでも命懸けだ。


 今行ったら無駄死に間違いなし。

 だから、今はその母と思われるマルゲリータ大賢者様を待つしかない。



「ところでシルヴィオ様、こちらの世界に来られたら、成人はだれでも職業に着かなければなりません。


 マルゲリータ様を待つならば、なんらかの職業につかないと、王法違反になってしまいます。」


「そうね。服装問題もあるしね。」


「その通りです。職業にあった服装をしなければなりません。」


 この世の中には、いろんな職業があった。


 簡単に言えば、農業、鍛冶屋、薬屋、宿屋、剣士、魔術師、白魔術士、僧侶、賢者などなどだ。


 店系はこの異世界に知り合いもいないので、ベルギウスと一緒にいて役に立てる職業が良いと思い、剣士を選択した。


 母さんが有名な賢者らしいので、俺にも賢者の才能があるかもと思ったが、ティファニーを救った時に戦った剣士としての熱い想いが忘れられなかった。


 ベルギウスは街に行って、剣士用の服、防具、剣などを調達して来てくれた。


 白いロングTシャツに白タイツ。


 その上に革製のチョッキに、革製のふんどし(急所の防具)だ。


 下着にふんどしって、いくら世界が違えど、恥ずかしいというか…


 もう何年もファッションなんて気遣った事なかったが、いくらなんでもこれは…


 着るのをしぶっているとベルギウスが察したのか、切実な事情を教えてくれた。


「シルヴィオ様、私とて、修行中の身であります。お金に限度があります。」


「お金かぁ。」


「モンスターを倒せば、街でいろんな店に売ることができるんです。


 皮は防具の材料にもなりますし、肉は肉屋で売ることができます。


 そうすればお金も手に入りますし、さらによい防具を購入することができます。」


「ありがとう。ベルギウス。この防具のお金はちゃんと返すからな。」


 その日から俺とベルギウスは毎日のように森に出かけて、モンスター狩りをした。


 もしかしたら、またあの森でティファニーに会うことができるのではという、淡い期待も抱きつつ。

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