第11話 現実世界はいつも通り


 ふと目が覚めた。


 現実世界の自宅に帰ってきた。



 毎日毎日、こちらとあちらを行ったり来たりしている。


 リズムもつかめてきた。


 夜にお香を炊けば、朝目が覚めて、会社に出勤できる。



 俺は、異世界の方が自分に合っているとは思いつつ、どことなくあれは夢の世界のような、そんな感じがしていた。


 だから現実世界でも生きていけるように、会社に真面目に行くようにしていた。


 異世界での俺は、体力も敏捷も優れているためなのか、現実世界に戻ると、どことなくだるい感じがする。


 それにしても、恋愛をあきらめていたこの俺が、結婚を直感するなんて、自分自身に驚きだ。


 以前、結婚している同僚が、奥さんに出会った瞬間に結婚を直感したとか、そんな話をしていたが、俺はその時、バカバカしいと思っていた。


 そんな直感があるわけ無いと思ったからだ。



 俺の場合は…、相手はまず、人間じゃ無くエルフだ。それに王女様だ。


 直感はしたが、結婚は相当難しそうだ。


 俺の直感の方がよほどバカバカしい…、と理性では思う。


 だけれども、本能的にはティファニーを想う気持ちは、止められない事は分かっていた。



 さて、俺の現実世界は、会社と家の往復だ。

 自慢じゃないが、それしかない。


 会社に出勤すると、村田課長は静かだった。

 少し遅刻したが、嫌味の一つもない。


 理由はすぐに分かった。


 我が課のアイドル、小鳥遊たかなしさんが休みを取ったからだ。


「最近、小鳥遊さん体調悪いみたいだなぁ。なんだか休みが多いなぁ。」


 それは独り言なのか、合いの手を入れた方が良いのか。


 俺は迷わず聞こえていないふりをした。


「おい風祭。」


「はいー。」


 めんどくさそうな風祭の返事。


「お前、会社以外でもよく会ってるんだろ。付き合ってるって聞いたぞ。


 小鳥遊さんは大丈夫なのか?」


「いや、その。俺知らないっすよ。最近別れたんで。」


 村田課長、絶句。


 聞こえないふりしてた、俺まで絶句。

 キーボード叩く指が止まってしまって、動かなくなった。


 そもそも社内恋愛する神経が信じられないが、つい最近つきあったという噂を聞いたばかりなのに、もう別れたのか。


 今時の若い奴は!!!


 いや、むしろ、風祭めーーーーーーーーーー。


 と言うことは、小鳥遊さんは失恋のショックで最近休んでいるのか。


 また元気に出社してくれればよいのだが。


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