第153話 22.ポイズレス
アンフィスバエナの鋭い角が、私を刺そうとすごい速度で向かってくる!
あぁ、もうダメ!!!
ガチン!
アンフィスバエナの角を弾く音が聞こえた。
「こんな所で何やってるんだ!」
大きな剣でアンフィスバエナの角を弾いた人がいた。
その人はよく見ると犬の姿をしていた。犬のモンスターが助けに来てくれた?と思ったが、だぶん人獣だ。
顔はシベリアンハスキーでとても大柄な人(犬)だった。
シベリアンハスキーさんは、あっという間にアンフィスバエナを倒した。
そして、倒れている私を抱え上げてくれた。
「な、仲間が危ないんです…毒消しを分けてください…。」
シベリアンハスキーさんは、私を抱えたまま走り出した。
●●●
『愛に満ちたるエルフ神よ、火、水、風、木、全ての精霊をここに集めん。
火の精霊よ、その炎の熱で、凍てつく者を温めん。
水の精霊よ、清らかな水にて、汚れた者を浄化せよ。
風の精霊よ、痛みの元となる素子を束縛し、吹き飛ばさん。
木の精霊よ、みなぎる木の生命を、怪我で苦しむ汝に分け与えたまえ。
我が祈り、コルネリアの輝きとなりて、苦しむ汝に加護を与え、救いたまえ。』
白魔術の呪文を唱える声が聞こえた。
まばゆい光に包まれ、ふんわりとした暖かさが全身を包んで目が覚める。
焚き火のわきで目が覚めた。
痛さと安心で、少し気を失ってしまったようだった。
急いで体を起こすと、モフモフな物が体の周りにある。
アンフィスバエナから私を救ってくれたシベリアンハスキーさんが私の体を包んでくれている。
側にはエルフの女の人と男の人が二人、焚火を囲むように座っていた。
そうだ!壮太君が毒で苦しんでいるはず。
私、どれくらい気を失っていたの!?
自分の体を確認すると、まだ人間で猫に戻ってない。
そんなに長く気を失っていたわけでは無さそう!良かった!
「すみません、仲間が毒で苦しんでいるんです!
ポイズレスを分けてもらえませんか!」
エルフの男の人が顔を赤くしてそっぽを向いている……。
はっ!!!!!
私、素っ裸!!!!
猫の時は洋服を着ないので、そのまま人間に戻ると素っ裸になってしまう。
素っ裸にブーツとロングソード二つを腰からぶら下げているだけの状態…。
シベリアンハスキーさんが、尻尾で私の体を今まで隠してくれていたみたい。
私はあわてて尻尾を胸の上まで上げた。
「なんの毒にやられたのですか?」
男の人が私の裸を見ないように、そっぽを向きながら聞いてくれた。
「コカトリスなんです!ポイズレスをどうかお分けしていただけないでしょうか!」
「僕の持っているポイズレスをお分けしましょう。コカトリスの毒にも十分に効くものです。」
「ありがとうございます!」
良かった!ポイズレスを入手できた!早く壮太君の所に戻らなければ!
「何もお礼が出来ないのが申し訳ないのですが、情けないことに本当に何も持っていなくて…。
すみません、仲間が苦しんでいるので、戻らせてもらいます!」
シベリアンハスキーさんの尻尾を持ったまま立ち上がった。
この尻尾を手放しで、素っ裸のままこの場を去らなければならない。
……。
まだ乙女なお年頃。
素っ裸になる事に少し戸惑ってしまったが、迷っている暇はない。この尻尾を握る手を放し、早く壮太君の所に戻らねば!
「お待ちになってください。時間が無くても、これを受け取ってください。」
エルフの女の人が、葉っぱを縫い合わせて、簡単な洋服を作ってくれていた。
「お渡しできる布が何もなくて、葉っぱになってしまったのですが…。」
胸と股間を隠せるだけの簡単なものだけど、すっごいありがたい…。
いくら数時間で猫に戻るといっても、私、まだまだ乙女なお年頃…。
周りにモンスターしかいないからと言っても、若い女が一糸まとわぬ姿で、外にいるのは精神的にキツイ。
「仲間のところまで共に行こう。一人で行くには危険すぎる。」
シベリアンハスキーはドミニクと名乗った。
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