第129話 42.異世界 1年後

 1年後の異世界。


 

 僕は解呪の薬の調合に成功していた。


 異世界と現実世界を自由に行き来できる薬ができた。


 体が消えかかることもなくなり、やっと落ち着いてきた。


 あれから、コルネリアには行っていない。


 僕の部屋も紫マントもそのままとの事なので、行けばみんな歓迎してくれると思う。


 でも、敢えて行っていなかった。


 ただ、コルネリア王の期待は裏切りたくないので、仕事、つまり呪いの研究については、マルゲリータ邸で行うようにして、時々報告していた。


 もちろん、同じ内容をレオンハルト王にも報告していた。

 


 僕と同じ薬を飲んだエンリコにも、新解呪の薬を飲ませた方が良いと思い、テレジア様とエンリコにマルゲリータ邸に来てもらったことがある。


 その時に、ティアナの様子も教えてくれた。


 僕がコルネリアから離れた後、悲しみのあまり落ち込んでいたようだったが、今は元気を取り戻して、生活しているとの事だった。


 エンリコは昏睡することもなく、元気にコルネリアに帰っていった。


 新解呪の薬は、問題が無いように思えた。



 マルゲリータ邸には、時々、現実世界から呪われて来た人が滞在していた。


 現実世界から来た人達の問題は、まずは解呪の薬を飲みたがらないという事だ。


 理由は簡単で、現実世界に戻りたくないからだ。


 新解呪の薬を飲めば、異世界に居続ける事もできるが、現実世界に未練でもあるのか、なかなか飲まないのだ。



 気持ちはわからないでもない。


 異世界でだって、楽しく生きていける保証は何一つないのだから。



 僕はティアナの事を愛していた。


 新解呪の薬の開発にも成功し、ティアナの元に行っても良いのではないかと、何度も思った。


 しかし僕は現実世界の人間で、いつか帰らなければならない。


 ティアナとはこのまま、距離をとっていたい。

 

 1年たって、ティアナの事を考える時間も減ったし、失恋の悲しみで苦しむ事も無くなった。


 このままでいいんだ。

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