第48話 英雄の悲しみ〜強力なモンスターを倒し、みんな英雄になったけど…〜

 鈴木さんはビーバーを倒し英雄になった!


 それだけじゃなくて、ビーバーが築いたダムを壊し、レオンハルトやコルネリアだけでなく、周辺の全ての国々の水問題を解決した事になる。


 やはり水は全ての生き物の生命の源。


 水と取り戻した英雄としても讃えられていた。



 鈴木さんはレオンハルト王国に戻り、ビーバー討伐に成功した事、マルゲリータ様先発隊の全滅を淡々と王様に報告した。


「強力なモンスターを倒した功績は大きい。王宮へ入り、私の部下として働かないか?」


 と王様が直々に言ってくれたのだけれど、鈴木さんは迷わずきっぱり断った。


 人手が足りないのか、王様はかなり良い条件を出したりして、王宮で働くよう説得していたけど、鈴木さんは最後まで断り続けた。


 王宮で働くとなれば大出世なのに!


 ちなみにベルギウスも、副隊長としての功績と、ビーバーのとどめを刺したという事で、シルヴィオ同様、王様が直々に王宮で働かないかと誘った。


 ベルギウスは、快諾した。


 普通、そうだよね…

 ベルギウス、大出世、おめでとう!


 鈴木さんはマルゲリータ邸に戻ると、そのまま引きこもってしまった。



 フローマーが食事を運んでいるようだったけど、あまり食べていない。


 私も気分転換にお散歩しないと、声をかけて見たが、無反応。



 ベルギウスに、しばらくそっとしておこう、今はシルヴィオには時間が必要なんだと言われて、そうするしかないなって思った。



 私は、びっくりするくらい、鈴木さんのいろんな姿を見た気がする。



 現実世界では、無口でいつも村田課長に怒られてた。


 でも、冷静に答えて、その後は黙々とパソコンに向かって何時間も黙って仕事してた。



 異世界では、泣いている私を慰めてくれた優しさとか、すごく楽しそうに笑っている所とか、巨大なビーバーと間近で戦い、一撃を食らわすという、勇敢なところも見た。


 そして、母を亡くし、悲しむ姿も。


 現実世界でも、異世界でも、本当に、一生懸命生きている人なんだな。


 私の現実世界は、親戚に迷惑かけないように、クラスで目立たないように、後ろ向きに一生懸命生きてきた。


 それに比べて鈴木さんは、どんな時も今を切り抜けるために前向きに一生懸命な人。


 なんて素敵な人なんだろう。



 私はコルネリア王国に戻り、お父様にビーバー退治の報告をしなければならなかった。


 でも、鈴木さんが心配で、もう少しマルゲリータ邸にお世話になる事にした。


 ティアナには猛反対されたけど。



 何日か経った後、鈴木さんが部屋から出て来た。


「みんな、いままでごめんな。


 俺、すごくみんなに迷惑かけたと思う。


でも、これから前を向いていかなきゃなって、気がついたんだ。」


 そう言った鈴木さんの顔は、少し痩せてしまっていたけど、表情は久し振りに少しスッキリしたよう雰囲気だった。


 本当に良かった。


 私は抱きついて思わず泣いてしまった。

 ベルギウスとフローマーも同じだった。

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