第98話 11.水晶の予言。僕の妻。

 やっと見つけた!長かった!マルゲリータの資料が!!!!


 僕はテーグリヒスベック城にあるマルゲリータの執務室に毎日のように通っていた。


 あ、マルゲリータのじゃなくて、もう僕の執務室か。そろそろ慣れないとな。



 マルゲリータの最初の資料は、彼女の日記だった。


 テーグリヒスベック城で働く事になるずっと前から始まっている。


 マルゲリータがまだ若い頃、魔術の勉強をしにコルネリアの城下町に出たところからだ。



 人間なのにレオンハルトではなくエルフの国のコルネリアで魔術を勉強したのか。


 自分の国以外で勉強するなんて、さすがマルゲリータだ。


 凡人とは若い頃から違うんだな。



 マルゲリータは青春時代をどのように過ごしたのだろう。


 どんな友達がいたのか、どんな恋をしていたのか、日記なら書いてあるだろう。


 僕はワクワクしながらページをめくった。

 


 ガタン!!!



 適当に積み重ねていた本が崩れて大きな音がして、僕は心臓が飛び出るかと思うくらい驚いた。



 人の日記読むんじゃねー!っというマルゲリータの呪いだろうか。


 辺りを見渡すが誰もいない。


 既に亡くなったとはいえ、人の日記を読むのは、なんだか気がひけてきた。


 うん。やめておこう。僕はそっと日記を閉じた。



 最新の書類は日記というよりかは、報告書のような書式だった。


 呪いによって、この異世界に来る人たちを観察していた。


 シルヴィオとティファニーは、マルゲリータが居なくなってから異世界に来たので、もちろん記載は無い。


 最後の文章は、僕の事だった。


「水晶の予言によると、私の死後、呪いの調査をベルギウスが引き継ぎ、彼は夫婦で協力しこの呪いの秘密を解き明かすとの事だ。


 私の命はそう長く無いようだ。


 命のあるうちに、彼がこの呪いを解明できるよう、少しでも手助けになるような事をしたいと思う。」



 ははは。つっこみどころ満載だ。


 マルゲリータが何十年も調査して来た呪いを僕が解き明かすだと?


 それも妻と一緒に?妻?いったい誰だ!


 現実世界で、今一応付き合っているナナちゃんか?まさか、ナナちゃんも異世界に来るのか?


 …………

 …………

 …………


 そんな事、あるわけないだろう。


 まさかナナちゃんがこっちに来るなんて。


 異世界の人と僕は結婚するのか?


 今の時点で彼女もいないのに。


 馬鹿馬鹿しい。マルゲリータは予言は苦手だったのでは?



 こんな水晶の予言なんて、まったく信じられない。


 とにかく今は、毎日できる事を頑張ろう。



 まずは、黒魔術の講義に出ないと。



 そうそう、今日の講義の先生は、いつものゲールノート先生ではなく、なんとレオンハルト王妃様が教えてくれるとの事だ!


 王妃を間近で見れるなんて、めったに無い事だ。


 美人で名高い王妃様の講義を受けれるなんて、どんなに具合が悪くても参加しようと、ずっと前から心に決めていたのだった。



 僕はいつもよりも早めに講義室に向かった。

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