第17話 母、マルゲリータ
その場にいた全員が、歓声をあげた。
ビーバーを倒した!!!!!
しかし、被害は大きかった。
イノシシ、戦士だけでなく、後方支援型のエルフ達と賢者も、ビーバーの吐いた水攻撃に大ダメージをくらっていた。
でも、白魔術師が二人生き残ったので、彼らが必死に、みんなに回復魔法を施し、全員が元気に復活した。
白魔術だけでも復活できない大怪我をした者には、薬草をつかった薬を飲ませたりしていた。
エルフはもともと薬草づくりが得意な種族でもあり、このビーバー退治に向けて、いろいろ持ってきてくれていた。
ティファニー含む全員が無事にレオンハルト王国に元気で帰れる事を確認し、心の底から安心した。
俺としては、隊長として一番責任を感じた瞬間だった。
それから、各国にちゃんと水が流れるように、ビーバーが築いた巨大なダムを壊さなければならない。
ダムの破壊はアドルノに指揮をまかせ、俺は王様からお願いされていた先発隊の状況を確認することにした。
8名の戦士の遺体が、ダムのすぐそばで発見された。
俺は母さんを探した。
母さんは生きている。俺は確信していた。
俺の頭の中に響いた声、あれは絶対母さんだ。
母さんは賢者だったから、きっと少し離れたところにいるはずだ。
俺は数名の剣士と、鳥型人獣に手伝ってもらって、母の捜索をした。
ベルギウスたちが、戦闘中に立っていた当たりの、少し後ろの山あいに、紫色の洋服が見え、俺は慌てて駆け寄った。
母さんだった。
「けんちゃん…来てくれたのね…」
現実世界と同じ呼び方で、母さんは俺を呼んだ。
「母さん!大丈夫???」
大丈夫なわけがなかった。体の半分以上が無くなっていた。
賢者にも回復魔法があるので、なんとか自分で自分に魔法をかけていたようだった。
「待ってて、今、白魔術師達を呼んでくるからっ。」
「けんちゃん、私はね、もうダメみたい…最期にあなたの勇敢な姿を見れて、本当によかった…最期に…最期に…どうか、この世界じゃなくて…うぐっ…現実世界で、ちゃんと生きて…」
そう言って、母は息絶えた。
いや、息絶えていない。
ここには優秀な白魔術師が5人もいるんだ。
蘇生術をかけてもらえば、生き返るはずだ!
ある程度の大人になると、人に情けない姿を見せないように、多少の事が起きても気丈にふるまうのが普通だ。
しかし、この時ばかりは、そんなことは微塵も忘れ、情けないくらいに必死に走り、みっともない大声で、白魔術師に蘇生術を懇願した。
白魔術師達は5人全員で、力を合わせて魔法を唱えた。
しかし、母は体の損傷が大きすぎて、体を治すことも、魂を呼び戻すことも出来なかった。
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