第93話 06.大事な人たちとの再会
王様との打ち合わせの後、僕はマルゲリータの執務室に連れていかれた。
なんと王様の執務室の隣だ…。
いかにマルゲリータがすごかったかが伺える。
こんな素晴らしい位置にある部屋を、自由に使ってくれと王様に言われたけど、僕が使ってしまって良いのだろうか…。
王様の期待の大きさに、僕はちびりそうになる。
部屋の中は、王様の部屋とまるで違っていた。
金ピカの装飾がなくて安心する。
あの中で過ごすのは、いくらなんでも落ち着かないよなぁ。
王様の部屋は窓がたくさんあり明るい感じだったけど、こちらの部屋は窓がなく薄暗い。
壁一面本だ…。
天井からはいくつもランプがぶら下がっているが、全て形が違う。
昼だけどそのランプ全てに明かりをつける必要があるほど暗かった。
そういえば、王様は僕が違う世界から来ている事を知っているのだろうか。
マルゲリータはどこまでいったい何を報告していたのだろうか。
マルゲリータからは、この異世界にいる人たちは、僕たちの世界を知らないと聞いているが…。
それにしても、すごい本の量だ。
奥にドアがある。
トイレか?と思って開けてみる。
すると、そこは広大な書庫だ!
執務室の10倍?20倍はある広い部屋だった。
そこに、本がびっしり…………。
い、いくらなんでも、この本を全部読むのは不可能だ!
いったいなんの本をどこから読んだらいいの!
この部屋自由に使っていいって言われたけど無理っ!
僕は途方にくれた。
そんな時、ドアの方から、ガタ!ガタン!と大き音が聞こえてきた。
よくみると、ポストのようなものがあり、誰かが書類を入れたようだった。
それは、黒魔術の講義のスケジュールだった。
さすが王様の司令。早い。
しかも、今から丁度始まる講義がある。
ここで途方にくれているよりも、間違いなく有意義だ。
僕は、黒魔術の講義に向かった。
◆◆◆
講義のある部屋に向かっていると、知っている人が歩いているのが目についた。
ビーバーモンスター退治のパーティーの一人、ゲールノートさんだ。
「ゲールノートさん!」
「あぁ、ベルギウスさん。お久しぶりです。あ、もしかして今日から登城ですか?」
細い目をさらに細くして、笑顔で挨拶してくれた。
この広い城に知り合いがいるというのは、とっても心強い!
「はい。そうなんです。
王様から仕事ももらったんですが、僕はもう少し黒魔術の知識も深めたくて、講義に参加させてもらうことになったんです。」
「ええ?!それって僕の講義ですよ。
ベルギウスさんに教える事なんて、僕には何もないですよ!」
ビーバーモンスター退治の時、怖くなって魔法詠唱できなくなってた人だよなー。
この頼りない人が先生だなんて、大丈夫なのか?
そういえば黒魔術の知識はすごい人だって誰かが言っていたなぁ…。
「恥ずかしながら、僕は一般的な黒魔術の知識は本当に浅いのです。
今日からよろしくお願いします。ゲールノート先生♪」
先生と呼ばれ、ゲールノートさんは恥ずかしそうにしていた。
僕が黒魔術の講義に出たいと言ったのは、黒魔術の知識を深めたいという気持ちもあった。
それ以外にも、知り合いが欲しかったのだ。
今までの親しい人は現実世界から来た人がほとんどだった。
そして今は誰もいないし…。
王様から調査を依頼されたのだから、知り合いは増やしておいたほうがいい。
さっそくゲールノートさんと会えたのは嬉しかった。
黒魔術の呪いの調査だから、分からないことがあったら気軽に聞ける関係になっておこう。
黒魔術の講義(中級)には、20名ほどの参加者がいた。
若い人もいれば、人生の途中でジョブチェンジしたらしき中年の人、男の人、女の人、いろんな人が集まっている。
「それでは講義を始めたいと思います。教科書を配りますねー。」
と、ゲールノート先生が講義を始めようとすると、ガラっとドアが開き、人が二人入ってきた。
「遅れまして申し訳ありません。」
と、口では言っているものの、まったく申し訳ないと思ってないのが伝わってくる堂々ぶりで講義室に入ってきたのは、エルフの男だった。
「あぁ、コルネリア王国からエルフの方が2人参加されると言う話は聞いています。
どうぞ空いている席についてください。」
「ちょっと待ってください。
先生!あまりに失礼すぎやしませんか?
此方の方がどなたかご存知で言っているのですか?」
失礼すぎやしませんか、というセリフにカチンと来る。
遅刻してきたのに、なんて態度のやつだ。同じエルフでもティファニーは礼儀正しく美しい人だったのに。
「こちらはコルネリア王国の第4王女 ティアナ・アマデウス・コルネリア様であります。」
あ!ティアナだ!ティファニーのお姉さん!
ビーバーモンスター退治のパーティにたあのティアナ!
この講義で2人もの知り合いに会えるなんて!
思いつきで王様に黒魔術の講義に出たいって提案したことだったけど、本当に大正解だ!
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