第73話15.嫉妬 〜恋のライバル現れる。ティファニーだけは誰にも渡したく無い。〜

 王様にそれぞれが役割を任命された後、僕たちは改めてお互いの自己紹介と、今後の予定について話し合った。


 王様の直々の依頼だし、各国の水について問題が大きくなり始めていたので、明日いっぱいで急いで準備し、あさって 出発という強行軍のスケジュールとなった。


 打ち合わせが終わり、解散後、僕はティファニーを探した。


「ティファニー!」


 ティファニーを呼び止めたのは、僕ではなくシルヴィオだった。



 本能的に物陰に隠れてしまった。


 何も隠れる事ないのに。


 一緒に二人の会話に混ざればいいだけだと思うけど、思いがけず二人の会話を盗み聞く形になってしまった。


「お久しぶりです。シルヴィオ様。またこうしてお会いできるなんて、とても嬉しいです。」


 そうは言うけど、ティファニーの顔は少し引きつっているようだった。


 なんとなくだけど、ティファニーはシルヴィオの事を警戒していると言うか、嫌いなのか?


 まぁ、僕の直感でしかないけど。


「王女様なんでしょ?敬語はやめてくれよ。」


「ま、王女なんだけどね、第5王女でしょ?。


 白魔術が得意なこともあって、こうしてパーティに組み込まれちゃうの。


 それに白魔術だから後方支援だし、怪我する事もあまりないしね。


 それに何よりも、水の問題はレオンハルトより、私の国コルネリアの方が大問題なのよ。


 だから、お父様が参戦するようにって事なの。」


 ティファニーの様子は、明らかに緊張して口数が多いというように見える。


「もしよかったら、今日の夜、ご飯でも一緒にどう?」


 うわっ、この流れで急にデートの誘い?


 恐ろしく空気の読めない男、シルヴィオ!


 作戦参謀を務めた頭のいいマルゲリータ様の息子とは思えない!



「まぁ、シルヴィオ。誘ってくれてすごい嬉しいわ。


 でも、モンスター退治に向けて明後日出発でしょ?


 準備がいろいろあるの。ごめんね。


 でも、道中は長いから、たくさんお話ししましょう。」


 ほらみろ。断られてるじゃないか。


 なんか盗み聞きしているのがバカらしくなった。


「やぁ、ティファニー!」


 僕は二人の会話に混じる事にした。


「ティファニーって王女様だったんですね。」


 ほんとうに驚いたよ。


 鳩にはそんな事一言も書いてなかったから。


 父親の話が時々あったけど、つまりはコルネリア王の事だよな…。


 僕、変なこと言ってないよな…。


「後方支援同士、頼りにしてるわ。ベルギウス。」


 ティファニーが優しく微笑むと、自分の汚い心までもが浄化されるような気になる。


 それくらいキレイで清楚な人だった。


 その時突然、強風が吹いて、ティファニーが着ているベールが強くなびき、そのせいで、髪飾りが飛ばされてしまった。



 僕はジャンプして取ろうとしたが、風の方が強く届かなかった。


 僕と同時にシルヴィオもジャンプした。


 現実世界なら誰にも負けないジャンプ。


 シルヴィオはティファニーの髪飾りをキャチし渡していた。

 

 ティファニーは、シルヴィオのジャンプにびっくりしていたが、髪飾りを取り戻してもらって嬉しそうにもしていた。


 それは僕の役割だったのに。



 モンスターを倒してもシルヴィオばかり有名になる。


 パーティの隊長もシルヴィオに持っていかれた。



 ティファニーだけは、渡したくない。



 僕は小さな焦りを感じた。


 シルヴィオはティファニーを誘っていたから、気があるのは間違いない。


 ティファニーはその誘いをはっきり断っていたけど、最後に髪飾りを受け取った時の嬉しそうな笑顔が忘れられなかった。



 ツークシュ山へ出発前夜、僕は手紙を書いて鳩につけて飛ばした。


 鳩はコルネリアのティファニーの部屋に行くだろうから、ティファニーがこの手紙を読むのはビーバー退治から帰って来た後になる。


 そんなのは分かっているけど、いてもたってもいられなかった。


『これを君が読むのはきっとビーバー退治から帰ってきた後だと思う。


 鳩を通してだけど、君の優しさち可愛らしさが伝わってきた。


 僕は君の事が好きだ。


 お互い無事に帰って来れたなら、僕の彼女になってくれないか。』



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