第55話 危険な状態〜お香の使いすぎは良くなかったみたい。呪い?もう手遅れじゃない〜


 ベルギウスは、自分もシルヴィオもお香により現実世界からこちらに来るのだと言った。


「びっくりしたよ。


 ティファニーも現実世界から来ているとは思わなかったよ。


 どうりで気があう訳だね。」


「もしかして、この異世界にいる人はみんな現実世界からきているの?」


「いや、それはないよ。


 マルゲリータ様は現実世界からこちらの世界に飛ばされて来た人たちをここに連れてきて、助けていたんだ。」


「そうだったのね…。」


「お香はどれくらい残っているの?」


「実はもうほとんどないの。あと3本くらい。」


「3本?!随分使ったね。体調は大丈夫?」


「最近は、現実世界にいたくなくて、ずっとお香を焚いていたの。


 そのせいか、現実世界に戻るとだるくて。


 最近はお香が無くても、目をつぶるとこっちに来れていると思う。」



「ティファニー!それは危険な状態だよ!


 現実世界でちゃんと起きて食事をして生きていかないと死んでしまう!


 死んだら、こちらでも死ぬんだ!」


「私、もういいの。ずっとこっちの世界に居たいの。」


「だめだ。ティファニー!次に目が覚めたら、ちゃんと生きるんだ!


 現実世界で生きるんだ!」


「大丈夫、心配しないで、ベルギウス。」


「いや、だめだよ。僕は君のことを死なせない。


 あのお香は呪いなんだ!君はお香に呪われすぎてしまった!


 君のために解呪の薬を作るよ。


 それを現実世界に戻った時に、ちゃんと飲むんだ!」


「……解呪の薬?」


「うん。でも、その薬を飲むと現実世界では元気になるけど、二度とこの世界には戻ってこれなくなってしまうんだ。」



 私は、現実世界の小鳥遊たかなしに戻りたくなかった。


 だから、このままで本当に良いのだ。


 死んだとしても……構わなかった。

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