第172話 08.ゲールノートの注意

 最近は、ディートと二人ですごす時間が増えた。


 卒業したら、もう会える機会はやってこないから、今は少しでも彼と一緒に過ごしたい。



 ディートは卒業したら結婚する事が決まっていて、相手の方とは1度だけ会ったことがあるそうだ。


「ノーラ姫っていうんだ。まぁ、可愛い顔はしていたけど、つまらない女だよ。」


「一度だけしか会ってないのだろ?


 相手の事なんて、まだ何もわからないさ。


 もっと話してみて、理解できるように努めいと。」


「違うんだよ。マルゲ。俺は君が好きなんだよ。」


 ディートはそう言って何度も私にキスをした。


 私だって離れたくない…。



 明日は卒業式。


 明日でもう会えなくなっちゃうんだな。


 感慨にふけっていると、ゲールノートに声をかけられた。


「やぁ、マルゲさん。」


「ゲールノート、突然どうしたんだ。」


「これを渡しに来ました。」


 ゲールノートが持ってきたのは一通の手紙。


 レオンハルト王国の文様が描かれている。


「ディート様の結婚式の招待状です。


 王宮学校からは、アクセル様と、僕と、マルゲさんの3人が出席します。」


 覚悟はしていたけど、やっぱり結婚するのか…。


「マルゲさん、あのぅ、周りのみんなはうすうす気が付いている事なのですが、ディート様とはその…。」


「言いたいことは分かる。


 私もディートの事は好きだし、ディートも同じ気持ちだと思う。


 二人でよく話すのだけど、卒業したらもう会えないことは分かっている。


 それは仕方のない事、すごく寂しいけど、お互い分かっているんだ…。」


「それを聞いて安心しました。


 結婚前から、ごたごたは起こしたくないですから。


 何卒、よろしくお願いします。」



 わかってるよ。ゲールノート。


 そんなの分かってる。


 でも、その日は一人でめちゃめちゃ泣いた。

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