第173話 09.結婚式の夜

 今日はディートの結婚式。


 レオンハルト王国の伝統に乗っ取り、荘厳で盛大な結婚式が行われ、国中大騒ぎ!


 私たちがディートに直接会って、おめでとうを言えるのは夜の晩さん会。


 卒業式から会ってないから、顔を見れるのは3か月ぶりだ。


 顔見たら泣いちゃいそうだけど、今日は絶対泣かない。

 笑顔でおめでとうって言うんだ。

 そう心に決めた。


 会場で、アクセルとゲールノートと同じテーブルで食事をしていたら、ディートとノーラ姫が一緒にやってきた。


 ノーラ姫の手は、ディートの腕をつかんでいた。


「ディート!久しぶり!」


 ちょっと疲れてそうだけど、笑顔で頑張ってる。


「みんな久しぶりだな!


 たった3か月ぶりなのに、すごい久しぶりみたいだ!」


「あなたたちが王宮学校の同級生ね。えっと、マルゲさん?


 お話はよく伺っています。」


 ノーラ姫はさすが一国の王女に選ばられる人。


 気品があって、すごい美人だ。


「王宮学校ではディートリッヒ様に大変お世話になりました。」


 スカートを広げ、片足を後ろに下げて挨拶した。


 ノーラ姫は美しい笑顔でディートと一緒に去って行った。



 全然話できなかった。


 挨拶に回らないといけない所がたくさんあって、私たちだけに時間を避けないのだろう。


 でも元気そうな顔が見れてよかった。


 

 一般市民の私が、王子様をこんなに間近で見ること自体が奇跡なんだろうな。


 本当に遠い存在になってしまった。




 しばらくたつと、ノーラ姫がドレスを着替えるとの事で、ディートが一人自由になった。


 すると、すぐに私たちのテーブルにやってきた。


「めっちゃ疲れた。忙しくて何も食べれてないんだ。」


「大変そうだな。」


「このテーブルが一番、気が楽だな。ちょっとここで休ませてもらうよ。」


 ディートは私たちのテーブルの空いている椅子に腰かけた。


「おい、大丈夫なのか。」


「あぁ、俺は休憩時間って言われてるんだ。


 座る暇もなくて、2時間立ちっぱなしさ。


 つまらない挨拶をえらい人たちにするだけで2時間だぜ。


 さすがに本当に休憩が必要だよ。」


 そう言いながら、アクセルにもゲールノートにも分からないように、小さな紙を私に渡した。


 

 紙には時間と場所が指定してある。


 ここに来いってことなのかな?



◆◆◆


「マルゲ、そろそろ帰ろうか。家まで送るよ。」


「ありがとう、アクセル。


 でも、少しレオンハルトの街を見ていきたくて、宿をとってあるんだ。


 ここから近いし一人でいけるから大丈夫だ。」


 私は、なんとかアクセルとゲールノートを巻いて、ディートの紙に書いてあった場所に向かった。



 城の端にある小さな部屋だった。使用人の資料室のような…。


 本当にここ?



「マルゲ!会いたかった!」


「ディート!」


 結婚式の衣装のままのディートがそこにいた。


 誰もいないのを良い事に、私はディートの胸に飛び込んだ。


「こんな所にいて大丈夫なの?」


「ここは俺が生まれ育った城だよ。心配しないで。


 それより3か月も会えなかったんだ。顔を見せてくれよ。」


「私も寂しかった!すごくすごく寂しかった!会いたかった!」


 ディートは力強く私を抱きしめた。


 そして、久しぶりにお互いの顔をよく見て、たくさんキスをした。



 その日の夜、私たちは激しく愛し合った。


 こんなに愛し合っているのに、もう二度と会えないなんて…。

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