第127話 40.王女のおもてなし

 僕は紫マントを纏い、王宮の馬を借りた。


 これからはいつだって馬を借りられる!


 なんていったって、僕は紫マント!


 そして馬の後ろにはティアナを乗せて街に出た。


 王妃様の許可も取っている。



 オレンジ散布の途中で急に呼び出されたから、お世話になった村長やウーリとウルリヒ達に挨拶をしたかった。


 それをティアナに自慢したかったし、村長たちには紫マントを自慢したかった。



 「ベルギウス様が紫マントになるのは、みんな予想していました。


 ここまで我が国に貢献されれば、当たり前のことです。」


 そういって、族長が僕に跪くと、周りにいたみんなも跪いた。



「族長!や、やめてください。


 昨日まで、同じ飯を食った仲間じゃないですか!


 どうか立ってください!」


 そうすると、みんなゆっくりと立ち上がり、お互いの顔を見て笑い出した。

 

「堅苦しいのはいらないよな!ベルギウス!」


 遠くの方で誰かが叫んだので、僕はそうだ!という意味を込めて、握りこぶしを上げた。


 よく分からないが、歓声があがる。

 

「これからは王宮で仕事をする事になりました!


 僕はこのコルネリアとそしてレオンハルト、両国のために尽力をつくします!」


 歓声と拍手が沸き起こる。


 それを見ていたティアナも、嬉しそうにしていた。


 エンリコの時は、ティアナに情けない姿をたくさん見せてしまったので、少しは勇者らしいかっこいい姿を見せられた!


◆◆◆


 その日の夕方、僕は王宮で王族のメンバーとテーブルを囲んでいた。


 王族の夕飯に招待されてしまった。光栄な事だけど、王様もいるので、すごく緊張するし、こういう場な苦手だ。


 エンリコの母であるテレジア様もいる。


 殴ってしまったので、未だに気まずいが、王族の中でただ一人緊張している僕を見計らって、やさしい声で話を振ってくれたのがテレジア様だった。


 それをきっかけに、僕はあの時、殴ってしまったことを陳謝した。


 いつか、謝りたいと思っていたので、とても良い機会だった。

 

「その件は、どうか気にしないでください。ベルギウス様。


 私の方が悪かったのです。


 それよりもエンリコを救ってくださり、心の底より感謝しています。」


 と、言ってくれて、心の荷が下りた。


 お酒の力もあり、肩の力が抜け、雑談にも参加できるようになった。


 もちろん、出しゃばりすぎは禁物だ。



 そのさなか、僕は握っていたフォークを床に落としてしまった。


 執事らしき人が、拾って新しいフォークを持ってきてくれたが、問題はそこではない。


 手に持っていたはずのフォークが僕の手をすり抜けたのだ。


 少し酔っていたとはいえ、今度は間違いなかった。


 ……僕の手は消え始めている……



 解呪の薬を飲んだのに、ダメだったのか。


 やはりアルゲン藻の雄株と雌株を間違ったら、解呪の薬にはならないのか…。


 僕は所詮、呪われた身なのか…。



「ベルギウス様、お顔の色が悪いようですが、お料理、お口に合いませんでしょうか。」


 王妃様が心配してくれた。


「いえ、一週間の疲れと、あとお酒が美味しかったもので、少し飲みすぎてしまったようです。」


「そうか、ベルギウス、本当にこの1週間はよく頑張ってくれた。


 みんな、もうデザートは食べ終わっているな。


 ベルギウスが疲れているから、今日は、そろそろ解散としよう。」


 王様が僕を気遣ってくれた。


 いろいろ失礼もしたが、許してくれたようだった。

 

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