第42話レオンハルト王国へ〜異世界なのに、現実世界の知り合いが話しかけてくる。向こうは私って気がついてないみたいだけど…〜

 私はティアナと他8名のエルフと一緒に、レオンハルト王国にあるテーグリヒスベック城にやってきた。



 ここには緑がないせいか、ほこりっぽい。


 どうして人間は町から緑を排除してしまうのだろう。


 木々の間に住んだ方が、絶対気持ち良いのに。


「それは文化の違いだから、仕方のないことよ。」


 ティアナに言われて、それもそうかと思う。



 案内されて到着したのは、大きな広間だった。


 コルネリアの城と似ている。



 前には王座があり、王座から出口までは緑ではなく、真紅の絨毯が惹かれている。


 その絨毯の両脇に濃い紫のマントを纏った大臣が、10名ほどほど集まっていた。


 その後ろに、エルフ、剣士、賢者、人獣が30名ほど集まっていた。



 王様は60代くらいの人間だった。

 確かお父様とは同い年のはず。


 同じ王様のせいか似たような雰囲気がある。


 怖そうに見えるけど、やっぱり娘には優しいのかな。



 王様は全員に、ツークシュ山のビーバーモンスターを退治するように王命を下した。


「先発隊として、マルゲリータのパーティが向かったが、戦況思わしくなく、生き残りが昨夜1名帰還した。」



「大賢者マルゲリータ様が?」


 ティアナは驚いていた。


 そういえば、マルゲリータはシルヴィオ(鈴木さん)のお母様だったはず…。


 異世界とはいえ、鈴木さん、心配しているだろうなぁ。


「剣士シルヴィオ、前へ。」


 王様がそう言うと、人前に出たのは、あの鈴木さん!


 んーーーーー!


 会いたくないって思ってたけど、同じパーティかぁ。


 しかも隊長さんなんだ。


 私、副隊長だし、話さないわけにはいかないよね。


 まぁ、私、外見が別人だからバレることはないと思うけど、ちょっとなぁ…。


 私の思いとはよそにティアナは楽しそう。


「ちょっと、最近、町で噂のシルヴィオ様とベルギウス様じゃない!


 すごーい!同じパーティにいるなんて!」


「え、あの二人有名なの?」


「知らないの?最近めちゃめちゃモンスターを倒しまくってて、すごい強いって有名なのよ!」


 あら鈴木さん、現実世界では冴えない感じだけど、こちらの異世界では随分出世されているのね。


 打ち合わせが終わり、明後日の出発に向けて準備のために国に帰らないと、と思っていると、呼び止められた。


「ティファニー!」


 一番会いたくない人物、鈴木さんだ。


「お久しぶりです。すず…シルヴィオ様。


 またこうしてお会いできるなんて、とても嬉しいです。」


 間違って鈴木さんって呼ぶところだった。危ない危ない。


 あの顔見ると、反射的に鈴木さんって言ってしまいそうになる。


 小鳥遊たかなしってばれないように平静をよそおって話さなきゃ。


 なんかやりづらいな。


「王女様なんでしょ?敬語はやめてくれよ。」


 現実世界では10歳以上違うから、敬語は常識だけど、異世界では私は王女様だものね。


 ため口でしゃべっちゃおうーっと。ふふっ。


「ま、王女なんだけどね、第5王女でしょ?


 白魔術が得意なこともあって、こうしてパーティに組み込まれちゃうの。


 それに白魔術だから後方支援だし、怪我する事もあまりないしね。


 それに何よりも、水の問題はレオンハルトより、私の国コルネリアの方が大問題なのよ。


 だから、お父様が参戦するようにって事なの。」


 10歳以上も年上の人を、ちょっと見下して喋ってしまった。不思議な気分だな笑


「もしよかったら、今日の夜、ご飯でも一緒にどう?」


 え、それってなんか誘ってるの?


 いや、そうだとしても、鈴木さんとデートはありえないかな…。


 会社の机の汚さを知っているからね…。


「まぁ、シルヴィオ。誘ってくれてすごい嬉しいわ。


 でも、モンスター退治に向けて明後日出発でしょ?


 準備がいろいろあるの。ごめんね。


 でも、道中は長いから、たくさんお話ししましょう。」


 はい。体良くお断りです。


「やぁ、ティファニー!」


 そこにベルギウスがやってきた。


「ティファニーって王女様だったんですね。」


「うふっ。そんな話を今、シルヴィオとしていたところよ。」


「白魔術が得意なんですね。僕と同じ後方支援型なんですね。」


「後方支援同士、頼りにしてるわ。ベルギウス。」



 ベルギウスと同じパーティなのはすごく嬉しい。


 とてもお話が楽しいんだもの。


 あとでティアナにも会わせてあげよう。



 その時突然、強風が吹いて、私のベールが強くなびき、髪飾りが風に飛ばされてしまった。


 鈴木さんは現実世界ではありえないほど、高くジャンプして髪飾りを取ってくれた。


 今日は、流石にスーツ姿でなく、剣士らしくアーマーに綺麗なマントを着ていた。



 意外とアーマーが似合っていて、馬子にも衣装というけれど、気のせいか鈴木さんがかっこよく見えた。

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