第68話10. モンスターとの戦闘 〜あんなモンスターとなんて戦えない!な、なんとか魔法を詠唱しないと!〜

 フローマーはシルヴィオが自分を見て、怖くて逃げ出した事を理解しているようだった。


「大丈夫だよ。フローマー。君は十分可愛い。


 あいつがおかしいだけだ。それよりも、夜の森は危険だから連れ戻さないと。


 一緒に探しに行こう。」


 フローマーは人間よりも嗅覚や聴力がずっと優れていた。


 こういう時は一緒に行くととても役に立つ。



「間違いなくこっちか?」


 ずいぶん歩いても見つからないので、フローマーに確認すると、フローマーは自信満々に「にゃっ」と答えた。



 すっかり夜になり、月まで出て来た。


 モンスターに遭遇してないか不安だ。


 さらにしばらくフローマーと歩くと、物音が聞こえて来た。


「グアアアアアアア」


 なんかモンスターが叫んでいるような声も聞こえる。


 さらに近づくと、クマほどの大きなモンスターとシルヴィオが戦っている。



 僕はフローマーにしがみついた。


 モンスターは大きく強そうだった。とても戦えそうにない。


「どうする?」


「にゃにゃにゃ!」


 フローマーもあんなに大きなモンスターとは怖くて戦えないと言っているようだ。



 あ!そうだ。僕は黒魔術を勉強したのだった。


 ミミズよりはもう少し大きいサイズの火の龍は出せるはずだ。



 僕は枝を拾った。


 本当は専用の杖があると威力が違うのだが、残念ながら今は持っていないから仕方ない。


「火の精霊よ、大地に眠るマグマの灼熱をここに集め、龍となって焼き尽くせ」



 しかし、枝は光りもしなかった。


 理由は簡単だった。


 僕自信がビビりすぎている…。


 呪文は心を落ち着け、集中して、意味を理解し、精霊に懇願するように唱えなければならない。


 練習と実戦がこんなに違うとは思わなかった。


 熊のモンスターはこちらに全く気付いてないし、距離もある。


 大丈夫!


 自分に言い聞かせ、深呼吸して、もう一度、心を落ち着け唱える。


「火の精霊よ、大地に眠るマグマの灼熱をここに集め、龍となって焼き尽くせ」


 炎の龍が出た!


 大きさは、ネズミくらいとかなり小さかったが…。


 小さい炎の龍だったけど、偶然モンスターにあたり、倒すことができた。


 よかった…。


 当たるとは思わなかったが、奇跡的に当たった…。



「シルヴィオ様!お怪我はございませんか!」


 急いで駆け寄った。


「ベルギウス…ありがとう。めちゃめちゃ助かったよ。」


「先程は私の配慮が足りなく驚かせてしまって申し訳ありませんでした。


 夜も更けましたし、いったん館に戻りましょう。」


「悪い…、人が倒れているんだ。連れて帰れないか?」


 僕はシルヴィオの指差す方を見た。


 真っ赤な髪と真っ白な肌。


 アガサと同じエルフの女性だった。



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