第119話 32.王都でのデート
「ベルギウス、久しぶりだな。」
ミルコだった!なぜだティファニー!
僕たちのデートに一番来てはいけない奴をなぜ連れて来たんだ!
リアルに涙が出そうだ。
僕がこのデートをどれだけ楽しみにしてたか!!!!
ミルコはここで会ったら100年目みたいな顔をしている。
そんなミルコとは対照的に、残念そうにティアナは話した。
「私は王族だから、城の外に出るときは、誰かお付きの者が必要なの。
本当はエステルっていう女の人を連れてくる予定だったのだけど、急に来れなくなって…。」
ティファニーも残念そうにしている。
でも気を取り直したのか、少しでもこの自由時間を楽しもうと思ったに違いない。
明るさを取り戻して言った。
「明日からヴァルプルギス村まで歩くのでしょう?
その衣だと目立ってしまうわ。
エルフの衣を買いに行かない?
これもあなたの旅のお手伝いになるでしょう?」
「そうだな。ありがとうティファニー。」
僕も気を取り直して、元気に答えた。
街中を歩くにも、ティファニーの隣を歩くことは許されなかった。
間にミルコが入ってきて、横3人で歩く羽目になった。
ティファニーと手を繋いで街中を歩きたかったのに。
悲しすぎる。
「ベルギウス、衣を買ったらお昼ご飯を食べに行かない?」
「何言っているんだ。ティアナ、君は王女なんだよ?
庶民が行くような食堂で食べるだなんて、絶対許さないよ。
そもそも衣屋に行くのだって賛成できない!」
僕は偉そうに話しているミルコの後ろから、ティアナの手を取って、後ろに走り出した!
ミルコがいたら、もう何にも楽しめない!ミルコから逃げよう!
果物、野菜、食器、魚、本、布、ありとあらゆるものが並び、多くの人が行き交う町中を僕はティアナと猛ダッシュで走った。
人にもたくさんぶつかった。
これだけ人が多ければ、ミルコも魔法は使えないだろう。
ティアナを連れているとあまり速く走れない。
様子を見るために後ろを振り返ると、ティアナの笑顔が目に付いた。
この状況を楽しんでる!
ティアナの笑顔で、僕のやる気にさらに火がついた。
ミルコの足はなかなか速くて、あぶなく追いつかれそうになる。
その時、生地屋が軒先きに生地を並べているのを見つけ、僕は一枚強引に頂戴し、ミルコの顔に投げつけた。
生地屋さんごめんなさい!あとで支払いに戻ります!
生地は想像以上にミルコに巻きつき、ミルコはなかなか外せない。
その間に、僕はティアナと街角を曲がり、そして走った。
同じ道に戻らないように、何回か街角を曲がった。
「はぁはぁ、ここまで来ればそうそう見つからないだろう…。」
ティアナも息を整えている。
少し落ち着くと、僕たちはお互いの顔を見て、しばらく笑いあった。
「あぁ、ミルコに後で怒られるわ。
でも、こんな本気で追いかけっこしたのはなん年ぶりかしら。
ミルコの真剣な顔ったらおかしくて!」
すぐそばに、衣屋があったので、僕たちはそこに入った。
初めてのエルフの服はよく分からなかったので、ティアナが選んでくれて本当に助かった。
ティアナは衣に合わせて帽子も選んでくれた。
僕は茶髪だったが、エルフは全員真っ赤な髪色をしているので、僕の髪色はとても目立ってしまう。
帽子を被れば、そうそう目立たないだろう。
衣屋で着替えて外に出た。後ろ姿は完璧エルフだ。
これならミルコも簡単には見つけられないだろう。
僕たちはお腹が空いていたので、適当に店に入り昼食を食べ、そして町中を二人で歩いた。
何をするでもなく、ティアナが隣にいるだけて、本当に僕は幸せだった。
「一般市民の衣を着ているとはいえ、王女様ってバレたりしないの?」
「そうね。時々、エステルと一緒に出かけることもあるけど、全然大丈夫よ。
私、町に出るのが大好きなの!
お店の食事は、お城の食事よりずっと美味しいし、市場にある物を見て歩くだけでもすごく楽しいの!
人々の活気を見るのも好き。
よく分からないけどそんな雰囲気が大好きなの。
でも、滅多に王様が許してくれなくて…。」
「では、今日はエステルさんの代わりに、僕がエスコートいたします。」
僕は黙って手を差し出した。
レオンハルト王国のヘレボルスの間で行われた晩餐会と同じシチュエーションだ。
「では喜んで。」
ティアナは僕手の上に、自分の手を重ねた。それから僕たちは手を繋いで、ゆっくり町中を歩いた。
僕は本当に幸せだった。好きになってはいけないと、我慢していたあの日々が本当にバカバカしい。
横を見れば、ティアナがいて、僕の視線に気がつきティアナがこれ以上にない癒される優しい笑顔で「私の顔に何かついてる?」と聞いてくる。
僕は本当に幸せだった。
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