第148話 17.シーフードレストラン


 お香を焚いて、マルゲリータ邸にくれば、壮太君と幸せな日々を送ることができる!


 明るくて元気で、人目を気にしない壮太君は、とても幸せそう。


 壮太君はエルフの女の子が好きみたいで、ティファニーとかティアナとか言う女の子に夢中になっているようだった……。


 でも、私(フローマー)の事を、可愛いとか好きって言ってくれる!


 けど…、そう私は猫だった…。


 エルフの女の子たちに対する好きと、猫の私に対する好きは、違うかもしれないけど…。


 それでも、好きって言ってくれるのは、純粋に嬉しい。



 何より壮太君が幸せそうだし、私のことも大事にしてくれるから、猫でいるものも良いかなって思う。



 だから、遠慮なく毎日お香を焚いて、マルゲリータ邸に来た。


 これは、生贄になったことがある私だけにしか分からない事だけど、あの呪いのお香は魔力の無い日本で、魔力の無い人が使うから問題があるの。


 魔力の無い人が使うと、魔力の代わりに生命力を吸収されて死んでしまうの。


 マルゲリータ様は気力と呼んでいたけど、そういう事なんだと思う。


 私は元はエルフで元々体の中に魔力があるから、日本に行った時も魔力が体の中に残ってて、だからお香を使って多少魔力を吸われても、何の問題もないみたい。


 もうお香は使いまくったけど、体が消える事なんて無いし…。

 

●●●


 マルゲリータ様がビーバーモンスターにやられて亡くなったと、壮太君から聞いた。


 優しかったマルゲリータ様。


 最期に息子のシルヴィオ様に会えたのかな。


 猫だから、その辺の事情を聞きたくても、伝わらない…。


 テレパシーの能力があるみたいで、私の思っている感覚みたいなものは伝えられるのだけど、細かい内容までは伝えられないみたい。



 マルゲリータ様が亡くなってからの壮太君は、毎日テーグリヒスペック城に通っている。


 壮太君はベルギウスとしてマルゲリータ様の仕事を引き継いだ。


 ビーバーモンスターも倒して、こっちの世界でもスーパースターになりつつあった。


 なんだか毎日忙しそうで、結構夜遅くに帰ってくる。


 バスケもそうだったけど、やろうと決めたら徹底的にやる人なんだなぁ。


 本当にすごいと思うし、尊敬しちゃう。


 それに、頑張っている壮太君は生き生きしていて、かっこいい。



 私は毎晩、壮太君のご飯を作って一緒に食べた。


 壮太君は、美味しいって食べてくれる。


 壮太君と一緒に食べるご飯は、美味しくて楽しくて、すごく幸せ…。


 ここにいれば、壮太君とたくさん一緒にいられて、とても嬉しい。



 それに、ナナの時では信じられない事が起きた。


 「いつもご飯作ってくれてありがとうな。今日は早く帰ってこれたんだ。


 たまには外食しないか?」


 壮太君が私を誘ってくれた!


 「んにゃーーーーーーーー!(めっちゃうれしいーーーーー!)」


 ちょー信じられなーい♪



 うきうき気分で、壮太君と二人で街に向かった。


「んにゃ、んにゃ、んにゃ♪(ルン、ルン、ルン♪)」


 町までの道すがら、鼻歌まで出ちゃう。


 スキップルンルン♪


「夕飯はどこのお店がいい?」


 私は迷わずシーフードレストランを指さした。


 大好きなツナのキャベツロールがあるのを知っていたから!


 前から気になっていたのだけど、なかなか一人で入る勇気がなかったの!



 

 もうすっかり夕方になり、月も見え始めていた。


 ふと空を見て、


 いつもは3つある月が1つしかない!今日はだった!


 3か月に一度やってくるシングルムーンの夜!


 エルフの中では常識なのだけど、シングルムーンの夜は著しく魔力が弱まる日…。


 今夜は壮太君と一緒にいられない!なぜなら…。


 せっかく壮太君が夕飯を誘ってくれたのに…。




 偶然、エルフの女の子が壮太君に話しかけている。


 たしかコルネリア王国の第4王女様で、話を聞いているとボディーガードとはぐれて困っているようだった。


 私は隙をついて逃げた。



 

 壮太君ごめんね…。

 

 今夜は一緒にいられないの…。


 なぜなら今夜は…。 


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